転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

大広間での発表が終わったあと、后妃は余裕の笑みを浮かべ、しなやかに扇を畳んで退出していった。

けれど、自室に戻ると同時に

「皆、下がりなさい」

低く押し殺した声が部屋に響く。
侍女たちは息を呑み、一礼して部屋を後にした。
重い扉が閉じると、静寂が落ちる。

后妃は、手にしていた扇をゆっくりと見下ろし……
次の瞬間、白い指がぎゅっと締まった。

バキッ。

華奢な骨組みが折れ、布が裂ける乾いた音が部屋に響く。

「……本当に……なんという幸運」

誰に向けるでもない、かすれた独り言。
しかしその声色は祝福ではなく、まるで『誰かを呪い殺す前の祈り』のように湿っていた。

引きつった唇の端が、笑っているのか苦しんでいるのか判別できない歪さを帯びる。
折れた扇を机に投げ捨て、深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

そして。
何事もなかったかのように、再び完璧な微笑みを浮かべ、姿勢を正した。
まるで先ほどの激情すら、最初から存在しなかったかのように。