転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

……薄く朝の光が差し込む部屋。

カチャカチャ、と小さな食器の音に目を覚ます。
はっ!服!……ちゃんと着てた。ほっと胸を撫でおろす。

部屋では侍女が朝食の準備を整えていて、昨晩まで隣にいたエドの姿はもうなかった。

「おはようございます。王太子妃殿下」
「あ……おはよう。あの……殿下は?」
「殿下は早朝からご執務に向かわれました」

そうか……結婚式後の休暇は終わってしまったんだ。

思わず再び布団に倒れ込む。
朝も昼も夜も一緒に過ごして、文字通り一日中ベッタリの一週間だったから……
温もりの消えた隣のベッドが、やけに冷たく感じられた。

朝食を食べ終えた後は、結婚前のお妃教育ほど厳しくはないけれど、引き続き礼儀作法の復習や、来客に備えた所作の練習に時間が割かれた。
姿勢を正す角度、扇の開き方、会釈の深さ……一つ一つに細やかな指導が入り、やっぱりまだまだ身に付けることは山ほどあるんだと痛感する。

午後はようやく自由時間。
先日エドと並んで歩いた庭園に腰を下ろし、読みかけの本をめくる指先が、なぜか少しだけ寂しさを帯びる。

……こんなふうに、ただのんびりできる時間を待ち望んでいたはずなのに。
時間の進む遅さに戸惑い、ぽつんと一人きりの空気に、胸の奥に少しだけ隙間風が吹いたような気がした。