転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

応接室に入ったセシルは、まだ幼い手でカップをぎゅっと抱きしめていた。
指先がかすかに震えている。胸の奥が重く沈む。

「セシル……弔問に、本当に行きたいのか?」

問いかけると、セシルは一瞬だけ瞳を揺らし、すぐに伏せる。

「……お母様の望みなら、従うまでです」

静かな答え。けれど、それが強がりでしかないことは明らかだった。
たった十二歳の子どもなのに、帝国という巨人を背負わせようとしている后妃の冷徹な意図が脳裏をよぎってしまう。
セシルは……どこまで理解しているのだろう。
彼の頭上に二つの王冠が載せられようとしていることを。

「セシル殿下……」
「姉上。ご心配、ありがとうございます」

声をかけると、セシルは無理に微笑んで答えた。
その笑みは痛々しく、必死に貼り付けた仮面にしか見えない。
こんなに小さいのに、やっぱり王子様で、自分の立場をしっかりわかっているんだ。
エドが手を伸ばし、セシルの頭にそっと置いた。

「困ったことがあったら、いつでも頼れ。俺はお前の兄だ。必ず守る」
「……はい、兄上」

小さな返事はかすれるほど弱々しい。
エドがセシルをどれだけ大切に思っているか。
そして、セシルがたくさんの物に板挟みになっていることが、痛々しいほど伝わってくる。
守ってあげたい。
守られるべきはずのこの子を。