転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

宮殿内の庭園。
いつからか、父上と二人で話す時は必ずここを選ぶようになっていた。

「……ふむ。同君連合(パーソナルユニオン)か。厄介な話だ」

吐息混じりの声。
俺はその沈黙を裂くように言った。

「父上。アリエルとの結婚を、早める許可を頂けませんか」

決意を告げると、父の眼差しが鋭くなる。
あの時、この場で父にリエルとの婚約を望むと伝えたのが、もう遠い昔のように思えた。

「……いつにするつもりだ」
「四月一日です」

「半年以上も早めるのか。……アリエル嬢には?」
「……それは……っ」

リエルは、怒るだろうか。
彼女の気持ちを無視して、政治のために話を進めようとする俺を。

「わたくしが、アリエル嬢の支度に付きますわ」

不意に母上が口を開いた。

「母上!」
「問題ないのか……?」

父上の問いに、母上は扇で口元を隠し、凛とした声で応じる。

「間に合わせますわ。陛下が一番ご存じでしょう?」

揺るぎない言葉に、胸が熱くなる。

「エド。あなたはアリエル嬢のもとへ戻りなさい」
「……!」
「きちんと話すのよ」

母上の眼差しは厳しく、けれど確かな信頼を帯びていた。

「……感謝します」

拳を強く握る。
俺はまだ、王太子としても男としても未熟だ。
王である父上、王妃である母上の力を借りなければ弟も未来の妻も守れない。

けれど、必ず守る。
そう胸に誓いながら、踵を返して公爵邸へ戻る馬車に乗り込んだ。