転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

「弔問にはセシルも同行させますわ」

后妃の柔らかい声音に、議場は凍り付いた。
滅多に姿を見せないはずの后妃が、ここで発言するなど。

「当然ですわ。セシルは薨去された皇太子殿下と遠縁にあたります。これ以上の適任はございません」

一見すれば筋が通っている。
だが実際には、これは弔問を装った帝国への『顔見せ』に過ぎない。

「それならば、従兄であるエドガー殿下の方が適任では?」
「まぁ!結婚を控えているエドガー殿下を国外に向かわせるなど……
王国の叡智ともいわれるルーメン公爵閣下らしくありませんわね」

后妃の扇が揺れ、場の空気を掌握する。
彼女の言葉を受け、ヴァレンシュタイン公爵までが静かに頷いた。

「后妃殿下の御心のままに」

……最悪だ。
后妃とヴァレンシュタイン公爵が既に手を組み、帝国と密約を交わしている可能性まで考えなければならない。
セシルは両国の未来の架け橋として祭り上げられながら、実際は人質同然にされてしまうだろう。

セシルにだけは母親としての情があると思っていた。
それすらも、俺の甘い幻想だったのか。

議場は后妃の一言で結論づけられ、散会となった。
唇を噛みながら、俺は彼女を初めて恐ろしいと心底思った。