転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜

「……どうすんだよ、読み切っちゃうじゃん」

ページを閉じた瞬間、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような虚しさが広がる。
あれだけ山のように買い込んだのに、結局最後の一冊まで辿り着いてしまった。

もしエドがそばにいたら……きっと、迷いなく『じゃあ本屋ごと抱えてこよう』と言い出すに違いない。
そんな姿が頭に浮かび、思わず口に出しかけて、慌てて唇を噛んだ。

ガウンの袖口に指を沈めると、かすかに残る香りが鼻先をくすぐる。
それだけで、まるで彼が隣にいるような錯覚に陥る。
……ほんと、バカ。いないのに、どうしてこんな気持ちにさせるんだよ。

悔しい。癪に障る。
だったら、今度は私からも贈り物をしてやろうか?

けれど、いざ考えてみると困ってしまう。
王子に贈る物って、いったい何がふさわしいんだろう。

エドは何かを欲しがる素振りを見せたことなんてない。
街に出ても、私が手に取ったものを次々に買い込むばかりで、自分の欲望を口にする姿を見たことがなかった。

服なんて必要な物はすべて仕立ててあるだろうし、宝飾品なんて言語道断。
誕生日や婚約式に贈られたものに張り合える自信なんて、私にはない。

思えば、エドの好きな食べ物も、趣味も、実はよく知らないんだよな。
知っているのはせいぜい誕生日くらい?

あ、でも好きな物一つだけ確実にあるわ。……アリエル。
なんて自意識過剰な考えが浮かんでしまい、顔が熱くなる。
誤魔化すように、横で丸まって寝ているワンワンを抱きしめた。