朔夜の熱い吐息が、露出した首筋をかすめる。
私を抱き締める腕が、強くなる。
唇が少しずつ開き、熱い舌が首筋の動脈をなぞる感触に、背筋を甘い戦慄が駆け抜けた。
次に来るのが何か、私はもう、すべてを分かって受け入れている。
「っ……!」
「……っ、ん」
ほんの一瞬だけ、鋭い痛みが首筋を走った。
けれど、それはすぐ後に、全身を痺れさせるような甘美な痛熱へと変わっていく。
己の生命が彼へと流れ込み、すべてを明け渡していく感覚が全身を包み込む。
離れないように、離さないように。
背中に回した手で、彼の隊服を強く掴み、引き寄せた。
「はっ……、ぁ……」
「……あ、っ」
引き抜かれた牙の痕から、一筋の血が流れる。
それを惜しむように、朔夜は優しく、深く、熱を持って舐めとった。
その濃密な感触に、身体が激しく震える。
痛くて、苦しくて、それなのに離れたくない。
彼が私を求めている。
私の血で、私の存在で、かろうじて正気に踏みとどまっている。
そう思うだけで、胸の奥が泣きたくなるほど熱くなった。
ゆっくりと顔を上げると、至近距離で彼と視線が重なった。
今まで見たどの視線よりも、烈火のような熱と、愛執を孕んだその眼差しに息を呑む。
「……ここも、ほしい」
掠れた声で囁かれながら、熱い親指で唇をなぞられる。
「梓」
初めて、契約の対象ではなく、一人の女として名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。
ただの番ではなく、役目でもなく、私自身を呼ばれた気がした。
「……構いません。全部、貴方のものです」
「それは……俺が、お前が番だからか?」
番だから?
始まりは、確かにそうだったのかもしれない。
命を救われ、命を繋ぐために血を差し出した。
何も知らないまま、番になった。
けれど、私にとって、もうそんな契約という形だけで、彼との関係を片付けることはできなくなっている。
朔夜の痛みと孤独を知った。
不器用な優しさも、息が苦しくなるほどの執着も知ってしまった。
それでも私は、離れたいとは思わなかった。
「違います。誰に決められたことでもない。……私の心は、私自身が決めました」
「梓っ……!」
「!……っ、んん」
荒々しく、貪るように唇を奪われる。
けれど、触れる先は驚くほど優しく、そして切ないほどに熱い。
逃げ場を塞ぐような腕の強さとは裏腹に、唇は何度も確かめるように触れてくる。
本当に拒まないのか。
本当に、ここにいてくれるのか。
そう尋ねられているようで、私は必死に彼の背へ腕を回した。
「梓っ、好きだっ……!」
「……はい……っ」
「好きだ。ずっと、ずっと……俺の、俺だけの……!」
何度も、何度も。
朔夜の紡ぐ熱い言葉に、溺れるようにして応える。
好きだと、まだ上手く声にはできなかった。
けれど、抱きしめ返す腕に、唇を重ねる呼吸に、彼を受け止めるすべてに、その答えを込める。
永い絶望と孤独の果てに。
この夜、私はようやく、本当の意味でこの人の番になれたのだと、確かに実感していた。
私を抱き締める腕が、強くなる。
唇が少しずつ開き、熱い舌が首筋の動脈をなぞる感触に、背筋を甘い戦慄が駆け抜けた。
次に来るのが何か、私はもう、すべてを分かって受け入れている。
「っ……!」
「……っ、ん」
ほんの一瞬だけ、鋭い痛みが首筋を走った。
けれど、それはすぐ後に、全身を痺れさせるような甘美な痛熱へと変わっていく。
己の生命が彼へと流れ込み、すべてを明け渡していく感覚が全身を包み込む。
離れないように、離さないように。
背中に回した手で、彼の隊服を強く掴み、引き寄せた。
「はっ……、ぁ……」
「……あ、っ」
引き抜かれた牙の痕から、一筋の血が流れる。
それを惜しむように、朔夜は優しく、深く、熱を持って舐めとった。
その濃密な感触に、身体が激しく震える。
痛くて、苦しくて、それなのに離れたくない。
彼が私を求めている。
私の血で、私の存在で、かろうじて正気に踏みとどまっている。
そう思うだけで、胸の奥が泣きたくなるほど熱くなった。
ゆっくりと顔を上げると、至近距離で彼と視線が重なった。
今まで見たどの視線よりも、烈火のような熱と、愛執を孕んだその眼差しに息を呑む。
「……ここも、ほしい」
掠れた声で囁かれながら、熱い親指で唇をなぞられる。
「梓」
初めて、契約の対象ではなく、一人の女として名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。
ただの番ではなく、役目でもなく、私自身を呼ばれた気がした。
「……構いません。全部、貴方のものです」
「それは……俺が、お前が番だからか?」
番だから?
始まりは、確かにそうだったのかもしれない。
命を救われ、命を繋ぐために血を差し出した。
何も知らないまま、番になった。
けれど、私にとって、もうそんな契約という形だけで、彼との関係を片付けることはできなくなっている。
朔夜の痛みと孤独を知った。
不器用な優しさも、息が苦しくなるほどの執着も知ってしまった。
それでも私は、離れたいとは思わなかった。
「違います。誰に決められたことでもない。……私の心は、私自身が決めました」
「梓っ……!」
「!……っ、んん」
荒々しく、貪るように唇を奪われる。
けれど、触れる先は驚くほど優しく、そして切ないほどに熱い。
逃げ場を塞ぐような腕の強さとは裏腹に、唇は何度も確かめるように触れてくる。
本当に拒まないのか。
本当に、ここにいてくれるのか。
そう尋ねられているようで、私は必死に彼の背へ腕を回した。
「梓っ、好きだっ……!」
「……はい……っ」
「好きだ。ずっと、ずっと……俺の、俺だけの……!」
何度も、何度も。
朔夜の紡ぐ熱い言葉に、溺れるようにして応える。
好きだと、まだ上手く声にはできなかった。
けれど、抱きしめ返す腕に、唇を重ねる呼吸に、彼を受け止めるすべてに、その答えを込める。
永い絶望と孤独の果てに。
この夜、私はようやく、本当の意味でこの人の番になれたのだと、確かに実感していた。



