結界の端が一瞬だけ激しく揺らぎ、二人の鬼狩りが誰かを抱き抱えるようにして外へ飛び出してきた。
抱えられていたのは、まだ幼さの残る若い隊士。
腕から先がどす黒い血で真っ赤に染まり、肩口の布はズタズタに裂けている。
顔は青白く、唇だけがかすかに震えていた。
「三番隊一名、負傷!番はどこだ!!」
「はいっ!いきます!!」
呼ばれた勝色の装束の娘が、迷いなく駆け出す。
一瞬の躊躇もない。
まるで、これまでに何十回、何百回と繰り返してきた当然の日常であるかのように。
彼女が苦悶の表情を浮かべる隊士の前へ膝をつくと、男の顔から、死を覚悟したような張り詰めた緊張が、ほんの少しだけ緩むのが見えた。
血を分かち、命を繋ぎ止める。
理屈では分かっていた。
けれど、血の匂いが立ち込める中で、苦しむ人の元へ一歩も引かずに進める彼女たちの強さが、私には眩しい。
次に運ばれてきた者は、自力で歩いていた。
片足を引きずり、深く抉られた脇腹を必死に押さえながら、それでも「まだ戦える、戻らせてくれ」と鬼気迫る顔で食い下がっている。
周囲の隊士が必死になだめても、彼の視線は結界の向こうから離れない。
その次は、二人。
一人は額から鮮血を流し、もう一人は顔色が紙のように白く、今にも事切れそうだった。
番の娘たちが次々に呼ばれていく。
結界の外縁には、いつの間にか咽せるような血の匂いと、鼻を突く薬の匂いが混ざり始めていた。
薬箱を抱えた隊士が走り、包帯がほどかれ、誰かの押し殺した呻き声が足元を這う。
私は、自分の無力さを感じたまま、ただ立ち尽くすことしかできない。
その時だった。
また一人、担ぎ出されるようにして運ばれてくる影が見えた。
けれど、今度は誰も「番を」とは叫ばなかった。
運ばれてきたその人の腕は、力なくだらりと地面へ垂れ下がっていた。
血に濡れた指先は、もう何も掴んではいない。
駆け寄った隊士が必死に何かを話しかけているけれど、返事はなく、彼はそのまま力なくその場に膝を突いた。
誰かが小さく、悲鳴のような息を呑む。
別の誰かが、悼むようにそっと目を伏せる。
濃紅色の番装束を纏った娘が一歩踏み出しかけて、けれど隣の女性に肩を押さえられ、唇を噛んで立ち止まった。
救える命と、もう届かない命。
その境目が、こんなにもあっけなく目の前に引かれるのだと知り、足元が冷たくなっていく。
「これでも……これでも本当に、被害は少ない方なんですか……?」
「ええ。恐らく、睦月隊長が出ていなければ、犠牲は倍では済まなかったはずです」
抱えられていたのは、まだ幼さの残る若い隊士。
腕から先がどす黒い血で真っ赤に染まり、肩口の布はズタズタに裂けている。
顔は青白く、唇だけがかすかに震えていた。
「三番隊一名、負傷!番はどこだ!!」
「はいっ!いきます!!」
呼ばれた勝色の装束の娘が、迷いなく駆け出す。
一瞬の躊躇もない。
まるで、これまでに何十回、何百回と繰り返してきた当然の日常であるかのように。
彼女が苦悶の表情を浮かべる隊士の前へ膝をつくと、男の顔から、死を覚悟したような張り詰めた緊張が、ほんの少しだけ緩むのが見えた。
血を分かち、命を繋ぎ止める。
理屈では分かっていた。
けれど、血の匂いが立ち込める中で、苦しむ人の元へ一歩も引かずに進める彼女たちの強さが、私には眩しい。
次に運ばれてきた者は、自力で歩いていた。
片足を引きずり、深く抉られた脇腹を必死に押さえながら、それでも「まだ戦える、戻らせてくれ」と鬼気迫る顔で食い下がっている。
周囲の隊士が必死になだめても、彼の視線は結界の向こうから離れない。
その次は、二人。
一人は額から鮮血を流し、もう一人は顔色が紙のように白く、今にも事切れそうだった。
番の娘たちが次々に呼ばれていく。
結界の外縁には、いつの間にか咽せるような血の匂いと、鼻を突く薬の匂いが混ざり始めていた。
薬箱を抱えた隊士が走り、包帯がほどかれ、誰かの押し殺した呻き声が足元を這う。
私は、自分の無力さを感じたまま、ただ立ち尽くすことしかできない。
その時だった。
また一人、担ぎ出されるようにして運ばれてくる影が見えた。
けれど、今度は誰も「番を」とは叫ばなかった。
運ばれてきたその人の腕は、力なくだらりと地面へ垂れ下がっていた。
血に濡れた指先は、もう何も掴んではいない。
駆け寄った隊士が必死に何かを話しかけているけれど、返事はなく、彼はそのまま力なくその場に膝を突いた。
誰かが小さく、悲鳴のような息を呑む。
別の誰かが、悼むようにそっと目を伏せる。
濃紅色の番装束を纏った娘が一歩踏み出しかけて、けれど隣の女性に肩を押さえられ、唇を噛んで立ち止まった。
救える命と、もう届かない命。
その境目が、こんなにもあっけなく目の前に引かれるのだと知り、足元が冷たくなっていく。
「これでも……これでも本当に、被害は少ない方なんですか……?」
「ええ。恐らく、睦月隊長が出ていなければ、犠牲は倍では済まなかったはずです」



