叫ぶ私の声は、夜の静寂を切り裂いて響いた。
自分のものとは思えないほど、強く、まっすぐな声だった。
つい先刻までは、絶望の淵でこのまま命を落としても構わないとさえ思っていた。
けれど、私は今、こうして生かされている。
この人に、拾い上げられた。
ならば、今度は私が手を伸ばす番だ。
「……あなたの、一生を捧げる覚悟が要ります」
「一生……」
「それは、もはや人としての平穏を捨てるということにもなります」
その言葉の重みが、ずしりと胸に沈み込む。
ほんの数分前までは、ただの行きずりの者同士。
助けた者と、助けられた者。
それだけの関係でしかなかったはずなのに。
けれど、私の魂は、この時のために生かされたのだと。
根拠のない確信が、凍りついた心を動かす。
ここで背を向ければ、私はきっと、この先どれほど生き延びても、自分を許せない。
「構いません!私が、この方を助けます。どうか、助けさせてください!」
「……わかりました。これより先は、あなたの命を隊長に預けることになる」
隊士の沈痛な声から最小限の手引きを受け、私は必死に抗うその人へと、一歩を踏み出した。
あんなに恐ろしいと感じていた死の気配。
けれど、今私が感じているのは恐怖ではない。
私を襲った化け物への忌むべき感情と、目の前の彼を蝕む痛みへの、やり場のない憤りだった。
彼の本能に、すべてを委ねる。
後は、この身を捧げる覚悟を、魂に刻み込むだけ。
不思議なほど、迷いは無かった。
ただ、ただ。
私を救ってくれたこの人を、闇の底から引き戻したい。
近づくほどに猛る熱風が、肌を焼き焦がさんばかりに吹き荒れる。
乾いた風に目を射られ、視界は白く霞んでいく。
乱れた髪が激しく舞い上がり、頬を打つ。
それでも、足は止まらなかった。
彼が大地に深く突き立てた、抜き身の刃。
そのもとへと辿り着くと、荒れ狂っていた風がふっと和らいだ。
まるで、台風の目のように、一時だけ訪れる静けさのように。
私は、彼の目の前に静かに膝をついた。
「先ほどは、命を救っていただき……ありがとうございます」
紅く、燃えるように充血した瞳。
苦痛に歪むその貌へ、私は震える指先をそっと伸ばした。
熱い。肌に触れる寸前の空気まで、燃えているようだった。
「今度は、私の番です……。貴方の苦しみを、私にください」
自分のものとは思えないほど、強く、まっすぐな声だった。
つい先刻までは、絶望の淵でこのまま命を落としても構わないとさえ思っていた。
けれど、私は今、こうして生かされている。
この人に、拾い上げられた。
ならば、今度は私が手を伸ばす番だ。
「……あなたの、一生を捧げる覚悟が要ります」
「一生……」
「それは、もはや人としての平穏を捨てるということにもなります」
その言葉の重みが、ずしりと胸に沈み込む。
ほんの数分前までは、ただの行きずりの者同士。
助けた者と、助けられた者。
それだけの関係でしかなかったはずなのに。
けれど、私の魂は、この時のために生かされたのだと。
根拠のない確信が、凍りついた心を動かす。
ここで背を向ければ、私はきっと、この先どれほど生き延びても、自分を許せない。
「構いません!私が、この方を助けます。どうか、助けさせてください!」
「……わかりました。これより先は、あなたの命を隊長に預けることになる」
隊士の沈痛な声から最小限の手引きを受け、私は必死に抗うその人へと、一歩を踏み出した。
あんなに恐ろしいと感じていた死の気配。
けれど、今私が感じているのは恐怖ではない。
私を襲った化け物への忌むべき感情と、目の前の彼を蝕む痛みへの、やり場のない憤りだった。
彼の本能に、すべてを委ねる。
後は、この身を捧げる覚悟を、魂に刻み込むだけ。
不思議なほど、迷いは無かった。
ただ、ただ。
私を救ってくれたこの人を、闇の底から引き戻したい。
近づくほどに猛る熱風が、肌を焼き焦がさんばかりに吹き荒れる。
乾いた風に目を射られ、視界は白く霞んでいく。
乱れた髪が激しく舞い上がり、頬を打つ。
それでも、足は止まらなかった。
彼が大地に深く突き立てた、抜き身の刃。
そのもとへと辿り着くと、荒れ狂っていた風がふっと和らいだ。
まるで、台風の目のように、一時だけ訪れる静けさのように。
私は、彼の目の前に静かに膝をついた。
「先ほどは、命を救っていただき……ありがとうございます」
紅く、燃えるように充血した瞳。
苦痛に歪むその貌へ、私は震える指先をそっと伸ばした。
熱い。肌に触れる寸前の空気まで、燃えているようだった。
「今度は、私の番です……。貴方の苦しみを、私にください」



