負けヒロインにもなれない

最悪の気分を味わった私は、あの日以降、生徒会役員の彼女と関わることはありませんでした。それでも、ピシリと入った心のヒビがくっつき直ることはなく。あと少しでも揺れたら、割れて、バラバラになってしまうのだと、私は感じていたのです。

そして、卒業目前。
私は、珍しく君が部活に行かずに帰る姿を見ました。ゆっくり押す自転車、その隣には見知らぬ女子生徒。「いや誰よ。」頭の中で冷静に言いましたよ。その女子生徒は、生徒会役員の彼女でもなく、本当に知らない生徒で。私の知らないうちに、君は三、四人ほど彼女が変わっていたそうですね。本当に人気者だこと。ただ、いつもと同じ表情の君の足取りが、珍しくゆっくりなものだから。なんだか、初めてゲームオーバーを感じました。
なんでもないように、君と彼女を追い抜かして帰る私。普段、清楚でいたい私は自転車の立ち漕ぎなんてしないのに。振り返って、君の彼女の顔を見ることさえも出来なくて。君はどうせ、私が抜かして行ったことにも気づいていないでしょう。
ギャルの彼女でもなく、生徒会役員の彼女でもなく、最後には私の知らない女の子。
きっと私は、君の世界からずっと前にいなくなってたんですね。いつからいない存在かだったのなんて、聞きたくないよ。

ぷちぷちと音を立てて千切れていく。私の初恋を繋ぎ止めていた糸。ついにヒビは、私の心の芯に届く。崩れて欠けた破片が、落ちながらさらに細かく割れていく。その頃には、私の初恋を飾り立てていた何かは、ヒビを抑える術を失いつつあるのでした。