小学校の六年間。君と同じクラスになれたのは、たった一度きり。たしか小学二年生の時だったかな。うれしくてうれしくて、心が弾んだ一年間。席替えのたびにドキドキしてた。
それでも話さない私と君。君から話しかけてきたのは、隣同士で手を洗っていたときでした。「ハンカチ貸して」その一言だけなのに、二人きりの廊下、差し出した花柄のハンカチの鮮やかな黄色。今でも、まるで白昼夢のように、思い出すときがあるのです。
サッカーが上手くて、運動神経がいい。それでいて、クールな君は当たり前に人気者だったね。君のことを好きな人が、常に十人はいたんじゃないかな。それを知って、私はため息が出る日々でした。物静かなところも、字が少し汚いところも、サラサラな髪は実は一時間かけてセットしていることも。私は全部知っていたのに。違うクラスになってしまった君を想って、ずっとそわそわしてました。
ちなみに、そんな私とずっと同じクラスだったのは、君の親友だったって知ってますか?彼も私同様、なかなか一途なもので。彼だって、モテない人ではなかったのに。つれない私に、かなり熱烈でした。それでも、私は君じゃなきゃ意味がなかったのだけれど。彼が君に何か言っていたのか、今となっては聞くことも出来なくて。
そういえば、君と親友が高すぎる跳び箱を跳ぼうとして、先生に怒られてた日があったね。君にもそんな危ないことをするところがあるんだと思って、ほこりっぽい体育館で、ついクスリと笑ってしまいました。あともう一つ。親友と音楽の時間に鍵盤ハーモニカで高速の「ねこふんじゃった」を弾いていたね。あまりにも子どもっぽいから、途中まで君の仕業だと思わなかった。
そんな君を見るだけの私。唯一勇気を出せるのは、年に一回のバレンタインだけだった。
私の一年はそのためにあるようなもので。あれは君でも覚えているでしょ。キーホルダーとマフラー。渡したのは、小学四年生か五年生。サッカーボールとユニフォームのキーホルダー、そして青色のマフラー。これが全部手作りで。びっくりするほど重めのバレンタイン。当時、手芸部の次期部長である私の自信作。今となれば、なんであんな勇気が出てしまったのか。恋多き友人からの「重くない?」の一言が、私をとんでもなく不安にさせた。でも、その不安は、君が私のマフラーをつけて登校したことで、あっさり吹き飛ばされたんだ。エナメルバッグにキーホルダーをつけてくれていたのも、後から知った。遠くから見たはずなのに、私が作ったキーホルダーだとすぐ分かったよ。君の大切なサッカー用のバッグについていたことが、うれしくって。赤レンガの上を歩くユニフォーム姿の君が、今でもキラキラと目の奥に残っている。
その年は、私以外からもバレンタインを渡されたそうだね。その子が「受け取ってもらえなかった」と言っていて、私は馬鹿みたいに期待してしまったよ。
君からのホワイトデーはどれもよく覚えていて、まだ三つほど捨てられていない。無くならないものをくれるなんて、君って罪な人だよね。センスもいいから困ったものだ。覚えてないかもしれないけど、君はピンクにうさぎの鏡をくれたでしょ。私はいまだにあの鏡で、君の知らない顔になるために、赤いリップを塗り直す。君を好きだったあの頃の、最高に可愛かった私の魔法がかかるから。
それでも話さない私と君。君から話しかけてきたのは、隣同士で手を洗っていたときでした。「ハンカチ貸して」その一言だけなのに、二人きりの廊下、差し出した花柄のハンカチの鮮やかな黄色。今でも、まるで白昼夢のように、思い出すときがあるのです。
サッカーが上手くて、運動神経がいい。それでいて、クールな君は当たり前に人気者だったね。君のことを好きな人が、常に十人はいたんじゃないかな。それを知って、私はため息が出る日々でした。物静かなところも、字が少し汚いところも、サラサラな髪は実は一時間かけてセットしていることも。私は全部知っていたのに。違うクラスになってしまった君を想って、ずっとそわそわしてました。
ちなみに、そんな私とずっと同じクラスだったのは、君の親友だったって知ってますか?彼も私同様、なかなか一途なもので。彼だって、モテない人ではなかったのに。つれない私に、かなり熱烈でした。それでも、私は君じゃなきゃ意味がなかったのだけれど。彼が君に何か言っていたのか、今となっては聞くことも出来なくて。
そういえば、君と親友が高すぎる跳び箱を跳ぼうとして、先生に怒られてた日があったね。君にもそんな危ないことをするところがあるんだと思って、ほこりっぽい体育館で、ついクスリと笑ってしまいました。あともう一つ。親友と音楽の時間に鍵盤ハーモニカで高速の「ねこふんじゃった」を弾いていたね。あまりにも子どもっぽいから、途中まで君の仕業だと思わなかった。
そんな君を見るだけの私。唯一勇気を出せるのは、年に一回のバレンタインだけだった。
私の一年はそのためにあるようなもので。あれは君でも覚えているでしょ。キーホルダーとマフラー。渡したのは、小学四年生か五年生。サッカーボールとユニフォームのキーホルダー、そして青色のマフラー。これが全部手作りで。びっくりするほど重めのバレンタイン。当時、手芸部の次期部長である私の自信作。今となれば、なんであんな勇気が出てしまったのか。恋多き友人からの「重くない?」の一言が、私をとんでもなく不安にさせた。でも、その不安は、君が私のマフラーをつけて登校したことで、あっさり吹き飛ばされたんだ。エナメルバッグにキーホルダーをつけてくれていたのも、後から知った。遠くから見たはずなのに、私が作ったキーホルダーだとすぐ分かったよ。君の大切なサッカー用のバッグについていたことが、うれしくって。赤レンガの上を歩くユニフォーム姿の君が、今でもキラキラと目の奥に残っている。
その年は、私以外からもバレンタインを渡されたそうだね。その子が「受け取ってもらえなかった」と言っていて、私は馬鹿みたいに期待してしまったよ。
君からのホワイトデーはどれもよく覚えていて、まだ三つほど捨てられていない。無くならないものをくれるなんて、君って罪な人だよね。センスもいいから困ったものだ。覚えてないかもしれないけど、君はピンクにうさぎの鏡をくれたでしょ。私はいまだにあの鏡で、君の知らない顔になるために、赤いリップを塗り直す。君を好きだったあの頃の、最高に可愛かった私の魔法がかかるから。



