「春斗!お前さ」
ふいに落ちてきた声に、はっと顔をあげる。
「さっきから何回ため息ついてんだよ」
目の前には、呆れた顔の秋人。
いつの間にか、朝のホームルーム前になっていたらしい。
"「…お前、ストーカーかよ」"
昨日の言葉が蘇る。
今までの行動の数々を冷静に考えたら、完全に引かれてる。ーーてかもう、嫌われてるだろ俺。
でもやっぱりーー
もう一度、先輩とキスがしたい。
全部がぐちゃぐちゃに混ざって、何度も繰り返される。
「お前、またやばいこと考えてんだろ」
「…なんでわかんだよ」
「お前の様子見てりゃ誰だってわかるわ」
秋人は俺の机に軽く寄りかかってため息をついた。
ーーいや、無理だ。
いくら一人で考えてても答えなんて出る気がしない。
「なあ、秋人」
「ん?」
「先輩に近づくには、どうしたらいい?」
「……は?」
俺の言葉に、眉毛をぴくっと動かして、開いた口が塞がらないような顔をしている秋人。
「いや、だからーー」
「やめとけ。…それしか言えねえわ」
俺の言葉を遮るように言い放った秋人に思わず身を乗り出した。
「そこをなんとか頼むって!お前しか相談出来るやついないんだよ」
「重っ」
秋人は顔をしかめながらも、少しだけ考えるように視線を泳がせてから、腕を組んで口を開いた。
「てかさ、お前…」
「先輩に近づいて、どうしたいわけ?」
ーーどうしたい?
そんなの、決まってる。
「……キス、したい」
「お前やっぱやべーわ!」
ぷっと吹き出して即ツッコまれる。
ーー今更だろ。
心の中でツッコミ返したところで、秋人の言葉が続いた。
「いや、違うだろ普通!そこまでいく前に段階ってもんがあるだろ!」
「段階?」
ーー考えたこともなかった。
「いきなりキスしろって言われて、誰がするんだよ」
「まずは相手の事を知って、仲良くなってからだろ」
「……確かに」
あの夢をみたのは俺だけ。
てことは、先輩は見ず知らずの相手(俺)に、キスしてくださいと言われた事になる。
そんな大事な事に、今更気付くなんて。
「……最悪だ」
「最悪も何も、既にお前は、先輩に嫌われすぎてるだろ」
「だから、無理だ。諦めろ」
ばっさり言い切って、秋人は自分の席に戻っていく。
秋人の言葉が、グサグサと胸に刺さった。
そもそも今俺は、先輩の何を知っているんだ?
すぐにスマホのメモアプリを開いて、指を動かした。________
【先輩の好きな物→ ???】
【先輩の特技→ 笑顔?】
【先輩の誕生日→ ???】
【先輩の家族構成→ ???】
【先輩の親友→ ???】
______
並んでいくのは疑問符ばかりで、打ち込んでいた手を止めた。
「……ダメだ。知らなすぎだろ」
ーーだからこそ
「……知らないと」
ーーとにかく、じっとなんかしていられない。
先輩の一日を見に行くしかない。
気づいた時には、先輩の教室に向かって歩き出していた。
三年の教室が並ぶ廊下。
真ん中の教室の前で足を止めると、中からはガヤガヤと楽しそうな声が聞こえてきた。
ーー先輩、いるかな?
気づかれる訳にはいかないと思うと、変に緊張してくる。
「……はあ」
小さくため息を吐いて、ドアの隙間からおそるおそる中を覗いた。
教室の中央あたりで、数人に囲まれて笑っている先輩を見つけるまでに、時間はかからなかった。
キラキラした笑顔。
女子にも、男子にも、同じように自然に笑いかけている。
「……やっぱり、完璧だ」
俺に向けられるのとは、全然違う。
ーーやっぱ俺、めちゃくちゃ嫌われてんだな。
思わず苦笑いがこぼれてきた時、
先輩の表情が一瞬だけ変わった気がした。
笑顔が消えて、俺に毒を吐く時のあの顔。
でも、すぐにいつもの王子様スマイルに戻った。
ーー今の顔。
毒を吐く先輩って、あれが素?なのか?
ーキーンコーンカーンコーンー
それ以上のことを考える前にチャイムが鳴り響いた。
「……やば」
慌てて教室に走る。
結局、まだ何もわからないままだ。
ーー好きなものも。
ーー考えていることも。
メモ欄をひとつでも埋めるまでーー
「…諦める訳にはいかない」
ふいに落ちてきた声に、はっと顔をあげる。
「さっきから何回ため息ついてんだよ」
目の前には、呆れた顔の秋人。
いつの間にか、朝のホームルーム前になっていたらしい。
"「…お前、ストーカーかよ」"
昨日の言葉が蘇る。
今までの行動の数々を冷静に考えたら、完全に引かれてる。ーーてかもう、嫌われてるだろ俺。
でもやっぱりーー
もう一度、先輩とキスがしたい。
全部がぐちゃぐちゃに混ざって、何度も繰り返される。
「お前、またやばいこと考えてんだろ」
「…なんでわかんだよ」
「お前の様子見てりゃ誰だってわかるわ」
秋人は俺の机に軽く寄りかかってため息をついた。
ーーいや、無理だ。
いくら一人で考えてても答えなんて出る気がしない。
「なあ、秋人」
「ん?」
「先輩に近づくには、どうしたらいい?」
「……は?」
俺の言葉に、眉毛をぴくっと動かして、開いた口が塞がらないような顔をしている秋人。
「いや、だからーー」
「やめとけ。…それしか言えねえわ」
俺の言葉を遮るように言い放った秋人に思わず身を乗り出した。
「そこをなんとか頼むって!お前しか相談出来るやついないんだよ」
「重っ」
秋人は顔をしかめながらも、少しだけ考えるように視線を泳がせてから、腕を組んで口を開いた。
「てかさ、お前…」
「先輩に近づいて、どうしたいわけ?」
ーーどうしたい?
そんなの、決まってる。
「……キス、したい」
「お前やっぱやべーわ!」
ぷっと吹き出して即ツッコまれる。
ーー今更だろ。
心の中でツッコミ返したところで、秋人の言葉が続いた。
「いや、違うだろ普通!そこまでいく前に段階ってもんがあるだろ!」
「段階?」
ーー考えたこともなかった。
「いきなりキスしろって言われて、誰がするんだよ」
「まずは相手の事を知って、仲良くなってからだろ」
「……確かに」
あの夢をみたのは俺だけ。
てことは、先輩は見ず知らずの相手(俺)に、キスしてくださいと言われた事になる。
そんな大事な事に、今更気付くなんて。
「……最悪だ」
「最悪も何も、既にお前は、先輩に嫌われすぎてるだろ」
「だから、無理だ。諦めろ」
ばっさり言い切って、秋人は自分の席に戻っていく。
秋人の言葉が、グサグサと胸に刺さった。
そもそも今俺は、先輩の何を知っているんだ?
すぐにスマホのメモアプリを開いて、指を動かした。________
【先輩の好きな物→ ???】
【先輩の特技→ 笑顔?】
【先輩の誕生日→ ???】
【先輩の家族構成→ ???】
【先輩の親友→ ???】
______
並んでいくのは疑問符ばかりで、打ち込んでいた手を止めた。
「……ダメだ。知らなすぎだろ」
ーーだからこそ
「……知らないと」
ーーとにかく、じっとなんかしていられない。
先輩の一日を見に行くしかない。
気づいた時には、先輩の教室に向かって歩き出していた。
三年の教室が並ぶ廊下。
真ん中の教室の前で足を止めると、中からはガヤガヤと楽しそうな声が聞こえてきた。
ーー先輩、いるかな?
気づかれる訳にはいかないと思うと、変に緊張してくる。
「……はあ」
小さくため息を吐いて、ドアの隙間からおそるおそる中を覗いた。
教室の中央あたりで、数人に囲まれて笑っている先輩を見つけるまでに、時間はかからなかった。
キラキラした笑顔。
女子にも、男子にも、同じように自然に笑いかけている。
「……やっぱり、完璧だ」
俺に向けられるのとは、全然違う。
ーーやっぱ俺、めちゃくちゃ嫌われてんだな。
思わず苦笑いがこぼれてきた時、
先輩の表情が一瞬だけ変わった気がした。
笑顔が消えて、俺に毒を吐く時のあの顔。
でも、すぐにいつもの王子様スマイルに戻った。
ーー今の顔。
毒を吐く先輩って、あれが素?なのか?
ーキーンコーンカーンコーンー
それ以上のことを考える前にチャイムが鳴り響いた。
「……やば」
慌てて教室に走る。
結局、まだ何もわからないままだ。
ーー好きなものも。
ーー考えていることも。
メモ欄をひとつでも埋めるまでーー
「…諦める訳にはいかない」


