夢でキスした先輩は、俺にだけ毒を吐く王子様。

***

家に帰ると、思い立ったように机の上に毛糸を広げる。
沢山の毛糸の中からいくつかピックアップしていく。

「……うーん」

ーー先輩に似合うのは、やっぱり

「これ、かな」

今まではただ何となく、季節をイメージした小物や、SNSのコメントでリクエストされた物を編んでいた。

モデルだなんて言葉を使うのは、おこがましいが、先輩と出会ってしまったせいで、編み物のイメージを考えるときすらも、先輩が浮かんで来てしまう。

「…あっ、そうだ」

先輩のおすすめのドーナツと選んだ毛糸を、綺麗に並べて写真を撮った。

SNSを開くーー
アカウント名、"kuro-shiro"
ーーさすがにバレるか?

「……いや、これならセーフだろ」

投稿ボタンを押して、キャラメル色のドーナツをかじった。

「……うま」

外は軽くて、中はしっとりしていて、あとからキャラメルの甘さがじわっと広がった。
ドーナツをかじる度に、先輩の姿が頭に浮かぶ。

冷たい声も、あの笑顔も。

ーー先輩はやっぱり、完璧だった。