夢でキスした先輩は、俺にだけ毒を吐く王子様。

先輩と付き合えた。
毎日が、信じられないくらい幸せで。
正直、ちょっと怖いくらいだ。

でも……俺だって、一応男。

俺からキスしたいときだって、
先輩をめちゃくちゃにしたいって思うときだってある。

俺からキスしたことは、まだない。

だから……今日こそは、って思ってる。

***

「で?さっきからなんだよ。ジロジロ見んな」

「え、あ……別に」

昼休みの理科準備室。
目の前で、パンを頬張る先輩をじっと見つめていた。

「お前まじ、わかりやすいな」

呆れたように言いながら、先輩が俺の方に少し体を寄せた。

こんな距離も、最近では当たり前になっているはずなのに。
やっぱりまだ、慣れない。

でもーー今日こそは。
覚悟を決めて、小さく息を吸った。

「……先輩」

「あ?」

俺を見るその目に一瞬だけ怯みそうになった。
でもそのまま、ぐっと距離を詰めた。

「っーー」

ほんの一瞬だけ。
でも、確かに触れた。

「……え」

いつも余裕そうな先輩が、珍しく固まっている。

「……お前」

そう言って、ぐいっと腕を引かれた。

「っ、先輩ーー」

一気に距離がゼロになって、先輩の視線が絡みついた。

「調子乗ってんじゃねーよ」

そのまま逃げれないくらい強く引き寄せられてーー

深く、唇が塞がれた。

「……っ、ん……」

息が上手くできなくて、頭が真っ白になる。
でも、離れたくない。
そう思ったのに、先に離された。

「あんま調子乗ると、これじゃ済まねえぞ」
「……ばーか」

そう言って笑う先輩は、やっぱり完璧だった。

***

ーー俺の悩みは、たぶん。
これからも、しばらくは解決しそうにない。



【完】

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