夢でキスした先輩は、俺にだけ毒を吐く王子様。

***

登校してから何度時計を見たかわからない。
早く先輩に会いたい。
ノートを開いているのに、内容なんてほとんど頭に入って来ない。
気づけばスマホを取り出していた。

今、メッセージしたら先輩怒るかな。

〚先輩!〛

送信ボタンを押した後、少し迷って、手を振っているスタンプを続けて送る。

ーーさすがに、ふざけすぎたかも。
そう思ったとき、画面が震えた。

〚ばか、きもい〛

「……っ」

思わず小さく笑いがこぼれた。

返信が来たこと。
ちゃんと繋がっていること。
それだけで、胸の奥の方がじんわり暖かくなる。

お昼を告げるチャイムと同時に席を立って、購買に走る。迷わず手に取ったのは、いつもの甘いパン。
会計を済ませて理科準備室へ急いだ。

「おせえ」

「すみません」

扉を開けると、すでに中にいた先輩がこちらを見て眉をよせていた。
買ってきたパンを差し出すと、いつも通り食べ始める。

ーーいつも通り。
向かい合って、パンを頬張る先輩をじっと見つめる。

俺だけが知ってる顔の先輩。
俺の好きな人。

先輩の好きな人も……俺?

いつ、聞こう。
どうやって聞こう。

「……お前、いつもいつも見惚れてんじゃねーよ」

「え……」

言い返す間もなく、ぐいっと腕を引かれる。
強く引き寄せられて、先輩の胸にぶつかった。

そのまま顔を上げると、すぐ目の前に先輩の顔があって、先輩の視線がゆっくりと落ちてくる。

キス、だよね?
ーーでも、このままじゃだめだ。

「……待って」

その言葉に、先輩の動きが止まる。
キスはしたい。
すごくしたいんだけど……でも。

「ちゃんと……教えてください」

昨日も、今も。

「……なんで、キスしてくれるんですか?」

先輩の気持ちが、知りたい。

「先輩は……俺のこと、好きですか?」

何も言わずにただじっと俺を見る先輩の視線から、目を逸らせない。

「……ほんと、めんどくせえな」

ぐい、と顎を引かれた。

「……っ」

反応する間もなく、唇が重なる。

何が起きたのか理解できないまま、固まる。

「……好きに決まってんだろ」

ーー"好き"
遅れて落ちてきた先輩の言葉。

「あの……もう一回、言ってください」

「あ?調子乗んな、ばーか」

そう言って、逃げれないくらい強く抱き締められた。
先輩の腕の中は、夢で見た時よりもずっと心地よくて、ずっと近くに先輩を感じた。

「ねえ、先輩、夢の続きしてよ」

「あ?夢はもう忘れろ」

そう言ってもう一度引き寄せられて、さっきよりも深く、唇が重なった。

ほんのり甘くて、キャラメルの味がした。


_______MEMO_______

【先輩の好きな物→ ドーナツ、甘い物】

【先輩の特技→ ドーナツ作り、俺をドキドキさせること】

【先輩の誕生日→ 4月20日】

【先輩の家族構成→ 一人っ子】

【先輩の親友→ 本間さん】

【先輩の好きな人→俺】

【先輩の口癖→調子乗んな、ばーか】
______

これからも、きっと増えていく。