「……誰っ」
唇に何かが触れた。
やわらかくて、少しだけ冷たい。
なのに、触れている場所だけ、
じんわり熱が広がっていく。
一瞬で、頭が真っ白になった。
「……っ」
言葉を発したいのに、声にならない。
目の前にいるはずの相手の顔がぼやけて、はっきり見えない。
「そんな顔、するんだ」
低くて、優しい声。
顎に指がかかって、上を向かされる。
その瞬間、視界がクリアになった。
目の前にいたのは、
息を呑むほど綺麗な顔。
ーーその瞳に吸い込まれるように、目を奪われた。
「やめる?」
試すみたいに呟く彼の言葉に、
反射的に首を振る。
そんな俺を見て、彼はくすっと笑った。
「……かわいい」
耳元で落とされたその一言に、思考が止まった。
そして、
もう一度、唇が重なった。
さっきよりも深く。
触れているところだけが熱くて。
息もできないまま、
ただーー離れたくない、と思った。
その瞬間、意識が途切れた。
***
「え…夢?」
見慣れた天井、いつもの朝。
ベッドの中から、周りを見渡す。
「なんだこれ…」
ゆっくり瞬きをして、
無意識に自分の唇に触れた。
やわらかさも、
温度も全部残ってる。
「夢にしては、リアルすぎる」
それにーー
「あんな人、忘れられるわけがない」
思い出しただけで、心臓がうるさい。
「…誰だよ」
もう一度、会いたい。
もう一度、触れたい。
夢なんかで終わらせたくない。
「…決めた」
そう言ってベッドから勢い良く体を起こした。
「絶対、見つける」
あの人を、現実で。
ーーもう一度、キスしてもらうために。


