テレパシー ー君の声だけ、頭から離れないー

ステージの熱が体に残って、なかなか消えない。

ーー軽音部に入って初めてのステージ。

ーー奏と一緒に、音を鳴らした。

それだけで、胸の奥がふわふわしていた。

イベントが終わったあとは、
さっきまでの盛り上がりが嘘のように、みんなで黙々と機材の片付けをしている。

隣にいる奏は、沢山のコードをまとめている。

ーー奏と話したい。

なのに。

"「…やっぱり俺、奏のことが好きだ」"

あんな告白をした後、
何から話せばいいのかわからず、
言葉が出てこないでいた。

「おーーい!」

勢いよく入ってきた声に、はっとして我に返った。

「春!!まじやばかったって!」

満面の笑みで駆け寄ってきた陽向。

「奏と春のステージ、まじ鳥肌立ったわ!!」

陽向の視線はそのまま奏に向き、続けた。

「奏、お前、軽音部来てくれるのか?」

陽向の言葉に、なぜか俺の方が緊張した。

「…いや、俺は軽音部には入らねえよ」

ーーわかっていた。

なのに、少しがっかりする自分もいた。

陽向も一瞬、残念そうな顔をしたけど、
すぐにいつもの調子にもどった。

「そっかー、まあいいや!」

「とりあえず!このあと打ち上げな!」

「二人とも片付け終わったら校門集合!!絶対来いよ!!」

そう言い残して、バタバタと去っていった。

いきなり静かになった空間に、
鼓動が速くなっていくのがわかる。

何か話さなきゃ。

そう思うのに、言葉は出てこない。

「……春」

名前を呼ばれて顔を上げた瞬間。

「行くぞ」

ぐっと手首を掴まれた。

「えっ!?」

引っ張られるままに、廊下を走って外に出る。

ーー足が止まった場所。

そこは、何度も何度も一緒に練習した場所。

壁にもたれて、空を見上げていた奏を何度も見てきた場所だった。

「…ここ?」

小さく呟くと、奏は少し視線を逸らして言った。

「…ここが、一番落ち着くから」

しばらく沈黙が続いた。

でも、不思議と苦しくはなかった。

「……なあ」

沈黙を破ったのは奏だった。

「お前さ、あれ本気?」

「…え?」

「俺の事"好きだ"って言ったよな?」

そう言ってそのまま一歩近付いてくる。

顔が一気に熱くなるのがわかった。

気づいたら距離が縮まっていて、目の前に奏がいる。

「なあ、本気なの?」

まっすぐ見つめてくる奏の瞳から、目が離せなくなる。

「…ほ…本気だよ」

俺の言葉に、奏の表情が少し緩んだ。

でもーー
その後すぐに、

「…俺も、好き」

確かに、そう言った。

ただ、胸がいっぱいで、視界が滲んでいく。

「…ほんと、泣きすぎ」

親指で俺の涙を優しく拭った。

ーーそして、
そっと唇が重なった。

一瞬の出来後で、何が起きたのかわからなかった。

でも、確かに奏を感じた。


空を見上げる。

あの夜と、同じ空。

でもーー

今は、隣に奏がいる。

これからもきっと、

奏の音は俺を呼ぶ。

そして、

俺の音は奏を呼ぶ。

テレパシーみたいに。


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最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!!