テレパシー ー君の声だけ、頭から離れないー

ーーステージに立った瞬間、
観客のざわめきが一気に押し寄せて来た。

そのざわめき全てが自分に集中しているように感じて、鼓動が速くなる。

それでも。

ーー隣に、奏がいる。

それだけで、
さっきまでの震えが嘘みたいに消えていた。

ギターを構えて、深く息を吸った。

ぽろん、と響く音。

ほんの少しだけ、震えていた。

ーーそして

隣から、奏の声が重なった。

あの夜俺を救った音。

でも今は違う。

俺の弾くギターと奏の声が、ぴったりと重なっている。

言葉にしなくても、伝わってくる。

奏が次に入るタイミングが、
考えなくてもわかる。

俺の音に、
奏の声が自然に重なってくる。

テレパシーみたいに。

最後の一音を鳴らすと、大きな拍手が押し寄せてきた。

隣を見ると奏と目が合って、
照れたように、笑い合った。

あの夜の音は、
ーーちゃんと繋がった。

そして、

"俺を救ってくれた音"から、

ーー"俺たちの音"になった。