テレパシー ー君の声だけ、頭から離れないー

ーー会わなきゃ。

ただ、走った。
息が上がっても、足は止まらなかった。

見慣れた場所に、
見慣れた影が見える。

二ヶ月前と変わらない影。
壁にもたれて、空を見上げている。

「奏」

目が合った瞬間、
胸の奥が強く締め付けられた。

「……春」

いつもと同じ奏の声なのに、
少しだけ遠く感じて、
数秒、何も言えなかった。

小さく息を吐いて、ゆっくり口を開く。

「…やっぱり俺、奏のことが好きだ」

自分でも驚くくらい、声は震えなかった。

奏の目が、わずかに揺れた。

「…だいぶ遅くなっちゃたけど、この前はごめん」

視線を逸らさないまま、続ける。

「奏のこと、何も知らないまま…勝手に踏み込んで、傷つけた」

「ちゃんと、知ろうともしないで、俺、自分の事ばかりで…ごめん」

奏はただ、黙って俺を見ている。

「でもさ、俺…」

「本当に救われたんだ」

ーーあの夜も…

「今も、ずっと救われてる」

「奏がいたから、俺、ここまで来れた」

「…だから、これからも弾くよ」

胸の奥が熱くなって、視界が滲んでいく。

「奏のギターで、ちゃんと音、繋ぐから」

ーーだから。

「歌ってよ…」

「奏じゃなきゃ、だめなんだ」

奏の目が少し揺れて、
潤んでいるように見えた。

「…明後日のイベント、絶対来て。隣、空けて待ってるから」

ーー言えた。

ーー全部。

これ以上は、踏み込まない。

この先は、奏が決めることだから。

奏の前で溢れてきた涙を、初めて自分で拭った。

そしてーー歩き出す。

背中に視線を感じながら、振り返らずに歩き続けた。