テレパシー ー君の声だけ、頭から離れないー

「…俺、奏が好きなんだ」

風の音も、遠くを走る車の音も、
全部遠のいていく。

ただ、目の前にいる奏だけが、
鮮明に見えていた。

「……」

奏は何も言わない。

視線が少し揺れていて、
目が合いそうになった瞬間、逸らされる。

沈黙が、痛い。

ーーそして。

「……俺は、やめとけ」

小さく呟いた。

奏の言葉の意味を理解することが出来なかった。

「…え?」

やっと絞り出した声は、
情けないくらいに震えていた。

今になってやっと、
奏の言葉が胸に、突き刺さる。

「……なんで」

「なんでそんな事言うの」

震える声で問いかけても、奏は答えない。

それでも、止められなかった。

「毎日、練習するぞって言ったじゃん」

「一緒にいるって、言ったじゃん…!」

溢れた涙で視界が滲んで、奏の顔がよく見えない。

「なのに…なんで、そんな…」

言葉を上手く繋げない。

胸が苦しくて、痛くて、
それでも伝えたい事がありすぎて。

「俺は、お前が思ってるようなやつじゃねえよ」

突き放すような、
冷たい口調で遮るように奏が口を開いた。

「勝手に理想押し付けんな」

その言葉に心臓がぎゅっと縮まった。

「……違う」

「奏は、逃げたりする人じゃないって思ってた」

声が震えて涙が止まらない。
言葉も止まらなかった。

「ちゃんと向き合ってくれるって…信じてたのに…」

俺の言葉に、
奏の表情が一瞬だけ揺れた気がした。

でも。

「……帰るわ」

小さく吐き出すように言って、
そのまま、振り返ることなく歩き出した。

「……っ」

もう呼び止める声は、出なかった。

ただ、遠くなる奏の背中を見つめる事しか出来ない。

遠ざかっていく足音。

それが聞こえなくなった瞬間、
力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。

「……っ、なんで…」

ーーやっと、伝えたのに。

ーーまた、届かなかった。

胸が、痛い。

嗚咽を押し殺しながら、ただ泣き続けた。