あいつが走っていった方向を、
しばらく、目で追っていた。
なんで逃げたのか、
わけがわからなかった。
「……意味わかんねえ」
さっきまで、普通に弾いていたのに。
いや、普通じゃなかった。
思い返せば明らかに、
様子がおかしかった。
「…なんなんだよ」
小さく吐き出した息が、
静かな空気に溶けていった。
頭の中に、春の姿が浮かぶ。
初めて会った時も、そうだった。
声をかけてきたくせに、
いきなり泣き出して、
意味わかんねえやつだった。
でも、なぜか放っておけなかった。
あの顔が頭から離れなかった。
「条件付きなら、考えてもいい」
あの時、
なんであんなことを言ったのか、
自分でもよくわからない。
軽音部に行く気なんて、なかった。
音楽なんてもうやらないと、
決めていたから。
…なのに。
気づけば、春に絡んでいた。
呼び出して、
くだらないこと言って、
試すみたいに、距離をつめて。
春の弾くギターの音が
心地よくなっていた。
ーーあの夜の感覚に似ていた。
拙いのに、引っかかる感じ。
指先の感覚が蘇る。
あの日最後に弾いたギター。
歌った歌。
全部終わらせたはずだった。
それでもあの時、
確かに、
誰かに届いているような気がした。
あの日の感覚はずっと残っている。
春の音色は、
ぎこちないのに、
まっすぐぶつかってくる。
うざいくらいに、まっすぐ。
ーー頭の中に、嫌でも蘇る。
親友と、追いかけた夢。
一緒に弾いて、
一緒に笑って。
デビューとか、
そんなこと、本気で考えてた。
俺よりもずっと、
本気だったんだと思う。
ーーだから。
"「…お前のせいだ」"
あんな事を言わせてしまった。
ーー否定、できなかった。
"「お前となんてやらなきゃよかった」"
音楽をやめると言って、
離れて行った親友を、
追うことが出来なかった。
引き止める資格なんて、なかった。
全部、俺のせいだと思った。
親友の夢も、居場所も、
全部俺が壊してしまった。
だから、
俺も音楽を捨てた。
……捨てたんじゃない。
そんな、綺麗なもんじゃない。
「……っ」
喉の奥が、ぐっと詰まった。
ーー諦めただけだ。
なのに。
「……なんで」
春のギターの音を聴くと、
引きずり出される。
忘れたはずの感覚も、
音も、全部。
もう関わらなければいい。
そう思っても。
「……はっ」
小さく、笑いが漏れた。
ーー無理に決まってるだろ。
春の泣き顔が、頭から離れない。
春が走って行った方向を、
もう一度見た。
「春…」
あいつは、
一体何を抱えてるんだ。
……なんで、
放っておけないんだ。
しばらく、目で追っていた。
なんで逃げたのか、
わけがわからなかった。
「……意味わかんねえ」
さっきまで、普通に弾いていたのに。
いや、普通じゃなかった。
思い返せば明らかに、
様子がおかしかった。
「…なんなんだよ」
小さく吐き出した息が、
静かな空気に溶けていった。
頭の中に、春の姿が浮かぶ。
初めて会った時も、そうだった。
声をかけてきたくせに、
いきなり泣き出して、
意味わかんねえやつだった。
でも、なぜか放っておけなかった。
あの顔が頭から離れなかった。
「条件付きなら、考えてもいい」
あの時、
なんであんなことを言ったのか、
自分でもよくわからない。
軽音部に行く気なんて、なかった。
音楽なんてもうやらないと、
決めていたから。
…なのに。
気づけば、春に絡んでいた。
呼び出して、
くだらないこと言って、
試すみたいに、距離をつめて。
春の弾くギターの音が
心地よくなっていた。
ーーあの夜の感覚に似ていた。
拙いのに、引っかかる感じ。
指先の感覚が蘇る。
あの日最後に弾いたギター。
歌った歌。
全部終わらせたはずだった。
それでもあの時、
確かに、
誰かに届いているような気がした。
あの日の感覚はずっと残っている。
春の音色は、
ぎこちないのに、
まっすぐぶつかってくる。
うざいくらいに、まっすぐ。
ーー頭の中に、嫌でも蘇る。
親友と、追いかけた夢。
一緒に弾いて、
一緒に笑って。
デビューとか、
そんなこと、本気で考えてた。
俺よりもずっと、
本気だったんだと思う。
ーーだから。
"「…お前のせいだ」"
あんな事を言わせてしまった。
ーー否定、できなかった。
"「お前となんてやらなきゃよかった」"
音楽をやめると言って、
離れて行った親友を、
追うことが出来なかった。
引き止める資格なんて、なかった。
全部、俺のせいだと思った。
親友の夢も、居場所も、
全部俺が壊してしまった。
だから、
俺も音楽を捨てた。
……捨てたんじゃない。
そんな、綺麗なもんじゃない。
「……っ」
喉の奥が、ぐっと詰まった。
ーー諦めただけだ。
なのに。
「……なんで」
春のギターの音を聴くと、
引きずり出される。
忘れたはずの感覚も、
音も、全部。
もう関わらなければいい。
そう思っても。
「……はっ」
小さく、笑いが漏れた。
ーー無理に決まってるだろ。
春の泣き顔が、頭から離れない。
春が走って行った方向を、
もう一度見た。
「春…」
あいつは、
一体何を抱えてるんだ。
……なんで、
放っておけないんだ。


