二列目、窓側、君のとなり〜猫とノートと、君の声〜

布団に入っても、
全然眠れる気がしなかった。

クラス替え前日、
天井をぼんやり見つめながら、
何度も寝返りを打つ。

ーーーもし。

朔と離れてしまったら。

そればっかりが頭の中をぐるぐるして、
目を閉じることすら出来ないでいた。

朔の顔が浮かぶ。

あの声も。
触れた時の温度も。

全部、こんなに近くにあるのに。

同じクラスにいる事が、
当たり前じゃなくなるかもしれない。

「……やだな」

小さく呟いて、
ぎゅっと布団を握った。

気付いたら、
空が少しずつ明るくなっていた。

結局ほとんど眠れないまま、朝を迎えた。

ーー学校に着くと、
掲示板の前は人でごった返していた。

「あった!?」
「どこ!?どこ!?」

飛び交う声の中、
必死に自分の名前を探す。

………あった。

視線を動かして、
その中にもう一つの名前を探す。

朔。

……朔、は。

見つけられないまま、
心臓の音だけが、
うるさくなっていく。

その時。

「紬、お前、何してんだ?」

後ろから肩をぽんっと叩かれた。
振り返ると玲央が万遍の笑みで立っていた。

「…玲央」

「なんだよ、その顔。見つかんない?」

「…っ、今…探してて」

上手く言葉が出てこない。

そんな俺を見て、
玲央は、ははっと余裕そうに笑った。

「俺ら、また同じクラスだってよ。朔も」

「……え」

玲央とまた同じクラスになれた事も、
もちろん嬉しい。

”朔も”

確かにそう聞こえた玲央の言葉に、
胸の奥に溜まっていたものが一気に溶けた。

「ほら、行くぞ」

玲央は立ち尽くす俺の腕を引っ張って、当たり前のように歩き出した。


ーー教室に入ると、既に沢山の見慣れない顔で溢れていた。


緊張しながら、教室を見渡す。

その視線の先に

ーー朔。

当たり前のように座っている朔と目が合う。

一瞬だけ、時間が止まった気がした。

気付いた時には、朔の所に駆け寄っていた。

「…おせぇよ」

小さく、そう言って笑う朔。

「…さっ、朔が早すぎるんだよ」

涙を堪えて、
声が震えそうになるのを、
必死で抑えた。

そして、朔の隣に腰をおろした。

ーー二列目、窓側に。

これからもきっと俺の隣には朔がいる。

そう、思えた。