二列目、窓側、君のとなり〜猫とノートと、君の声〜

クラス替えまで、あと一ヶ月。

まだ一ヶ月も先のはずなのに、
教室ではその話題ばかりだった。

「次、誰と同じクラスになるかな」
「絶対バラけるって」

周囲から聞こえてくる、
そんな何気ないやり取りが、
耳に残る。

ーーもし。

朔と離れてしまったら。

そう考えると、
寂しさが込み上げてくる。

シャーペンを持つ手に、
無意識に力が入った。

…なんでこんなに、不安になるんだろう。

少し前までは、
目が合うだけで十分だったのに。

でも…
朔の隣にいることが当たり前になってしまった今。

離れることを想像しただけで、こんなにも落ち着かなくなる。

「……はぁ」

小さくため息を吐いた。

「また難しい顔してる」

後ろから聞こえた聞き慣れた声に、
心臓がトクンっと音を立てた。

振り向くと優しく微笑む朔がいた。

「そんな顔…してないよ」

「どした?なんかあったか?」

心配そうに覗き込む朔。

「……なんでもないって」

そう言って視線を逸らす。

「ふ〜ん」

朔は何か言いたそうに唇を尖らせた。

少しの沈黙のあと、
ふと、指先が触れた。

そしてーー

朔はそのまま俺の手をぎゅっと握った。

「……っ」

さっきまでの不安が消えたみたいに、
鼓動が速くなった。

「さ、朔……」

「…ん?嫌なの?」

そう言ってイタズラな顔で覗き込んでくる。

「嫌じゃ…ないけど、ここ教室」

「紬が、難しい顔してたからだろ」

「何かあったら、ちゃんと言えな?」

「…うん」

「なら、いい」

小さく笑って、俺の頭を撫でる。

……朔はずるい。

それだけで、
さっきまでの不安が、
少しだけ薄れた気がした。

ーーでも。

消えたわけじゃなかった。