景朝で「白」はどこにでもある姓だ。瑤華も、それほど目立つ名前ではない。 「陛下?」 「――北方へ行く。手配を」 「いまは冬ですよ、巡察へ向かわれるのでしたら暖かくなってからの方が」 「いや、今だ……今しかないのだ」 ――この白瑤華という女性官吏が逃げてしまう前に。 彼女があのときの寵姫であると確証があるわけではない。だが、玄耀の瞳に迷いはなかった。 たとえ別人であったとしても、その名をこの世界に見つけた以上、確かめずにはいられない――……。