身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~


 珠児は満足そうに頷き、木片を並べ直す。その仕草が誰かに似ていることに、彼女は目を伏せる。
 顔を上げた息子はそんな母親の反応を気にすることなく、ぽつりと呟く。

「この人、ここに来るんだね」

 瑤華は答えなかった。
 灯を落としながら、心の中でだけ思う。

 ――来ないでほしい。
 ――けれど、もし来るのなら。

 無邪気に微笑む息子の面影は、否応なしに彼を思い起こさせる。
 戦乱のどさくさに紛れて逃げ出した瑤華にとって、彼はもう過去の人間のはずだった。
 だが、あれから五年近くが経つというのに、彼の子どもの話は出ていない。平和を取り戻した後宮には大勢の妃がいるだろうに、懐妊の『か』の字も後継者の噂もない。
 もし、彼が珠児を自分の息子だと認めて迎えてくれるのなら――子どもだけでも、華やかな世界へ送り出したい。
 そんなことを、瑤華はぼんやり思うのだった。