雪が降っていた北方とは違う、賑やかで雲一つない皇都。
冬の終わり特有の、乾いた風が強く吹いていた。土埃にむせながら、瑤華は馬車から降りて、城のなかへ入っていく。
門を入ったところで、男児向けの官服を着た珠児が声をあげた。
「へいか!」
北方で見たときよりも威厳のある、堂々とした立ち姿に瑤華の胸がときめく。
彼の隣に立つことは安らぎではなく、責任を引き受けることだ。
傍にいるのは愛されるだけの場所ではない。守られるだけの立場もまた違う。
一度は身を引いたけれど、この五年で瑤華は強くなった。
「一ヶ月のあいだにおおきくなったな」
「そうかな?」
「ああ。背が伸びた気がする。我がいない間、瑤華のことを守っていてくれたのだな」
「えへへ」
珠児――この子が生まれ、彼が父である世界を嘘にしたくない。
「景朝国皇帝、景玄耀……わたしは、あなたの妻になります」
景朝の皇帝の妻として、景珠晟の母として、ここに立つと決めたから、瑤華は息子を連れて謁見した。
「……遅い」
そう言って、玄耀は笑った。
晴天の空のようにからりと笑った。



