身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~


 子とともに……その一文が、瑤華に刺さった。
 官吏としての評価と、制度としての正当な召喚。
 どこを切っても、私情は書かれていない。けれどこれは、皇帝からの恋文に等しい。
 だって。

 ――あなたの顔が浮かんで仕方がないの。

 瑤華は、文を畳み、膝の上に置く。


   * * *


 その日の夜。
 珠児が眠ったのを確認した瑤華は、灯りを落とした部屋で、ひとり考えていた。

 ――行けば、生活は一変する。珠児は「皇帝の子」として守られる。学も、地位も、未来も約束されるだろう。

「でも……こわい」

 後宮。
 玉座。
 政治と視線と、噂と嫉妬。

 ――あの世界に、この子を連れていく?

 静かな北方の町で、名も知られぬまま、笑って暮らす日々を過ごしている珠児を見ていると、ここで穏やかに慎ましくして方がずっと幸せなのではないだろうか。

「……行かない」

 声に出してみると、不思議としっくりきた。
 皇城へは行かない。
 官吏の任も辞退すればいい。そうすれば、何があっても起こっても、珠児と生きていけるだろうから。

 ――それが、母としての選択。

「ほんとうに?」