「――そなたを想う男であることだけは、許せ」
その言葉に、瑤華の目が潤む。
「……ずるいひと」
「そうか」
「相変わらず、拒めない言い方ばかりなさるのね」
玄耀は、微かに笑った。
「そうさ。拒めぬように、言っておるのだから」
そこに瑤華がいることを確認するかのように、玄耀は彼女の額に軽くふれた。
「共に、休んでもよいか」
「……珠児が」
「あれだけはしゃいでおったのだから、起きぬよ」
瑤華は、ほんの一瞬迷ってから、頷いた。
寝台に並んで横になる。
距離は、まだある。
玄耀はすぐにはふれなかった。
「……逃げたいか?」
「逃げませんよ?」
その答えを聞いてから、彼は腕を伸ばす。
抱き寄せるのではなく、包み込むように。
彼の胸元にふれた瑤華は、心臓の位置に耳を置いて、いつかのように鼓動を感じていた。
「心臓の音……」
「うるさいか」
「いいえ。ただ、懐かしくて」
――とても、落ち着く。
瑤華の心の奥底にすとん、と入り込む。
そんな彼女を見て、玄耀も満足そうに声をかける。
「瑤華」
「……」
「明日も、ここにいるんだ」
「……命令、ですか」



