瑤華の手首をはなすことなく、玄耀は距離を近づける。
吐息が顔にかからないギリギリのところで、彼はぽつりと本音を吐く。
「恨んでいた」
「……」
「だがそれ以上に、耐え難かった」
低く、静かな声に、瑤華の胸が、苦しく鳴る。
「死んだと思えば、諦めもついた。生きていたと知ってしまえば……話は別だ」
「わたしは、あなたを信じきれませんでした」
「違う。我が、信じさせられなかっただけだ」
その思いがけない言葉に瑤華は顔を上げる。
玄耀は、まっすぐに彼女を見ていた。
「守ると言いながら、後宮に閉じ込めた。安心させると言いながら、孤独にした。我はそなたが何も言わないのを良いことにそのままにしていた……逃げたくなるほどイヤだったのか」
「わたしはただ……身を引いただけです」
「そうか」
瑤華を否定することもせず、玄耀はうむ、と頷き、掴んでいた手をはなした。
「責めはせぬ」
「……なぜ?」
玄耀は、ほんのわずかに目を細めた。
「責めれば、また失うだろう?」
その言葉には深い執着の念が籠っている。
瑤華の胸が、きゅっと縮む。
「……わたし」
「諦めてはいない」



