身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~


 皇帝相手に気安く会話する息子を咎めようとする瑤華に、玄耀がゆるゆると首を振る。どうやら彼も珠児との会食を楽しんでいるようだった。
 珠児は玄耀の皿に包子を置いて、その場で割っている。肉汁がじゅわりと滲み出し、湯気が立ち上った。

「はんぶんこ」
「よいのか」
「うん。へいかも、とうさ……」

 言いかけて、珠児はきょとんと口を閉じた。
 瑤華の手が、思わず卓の下で強張る。

 ――この子は彼が自分の「とうさま」だと気づいているのだろうか?

 けれど玄耀は、何も言わずにその包子を口にした。
 他人の食べかけを口にするなど、皇帝としてはあり得ない。それなのに、彼は躊躇うことなく味わっている。

「……うまいな」

 その言葉に、珠児は満足そうに頷き、得意げな顔を瑤華に見せた。
 次に湯麺が運ばれてくると、玄耀は箸を手に取り、少しだけ迷ったあと、静かに麺をすする。音を立てることを気にする仕草に、瑤華が小さく口をひらく。

「……町では、音を立てても構いません。美味しい証ですから」
「そう、か」

 再び麺を口に運ぶ彼の姿は、どこか不器用で、それでいて一生懸命だった。