身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~


 珠児が目を輝かせて立ち止まると、玄耀は一瞬だけ視線を巡らせる。警護の者たちは距離を取り、あくまで目立たぬよう控えていた。
 皇帝が町の屋台に足を止める光景など、誰が想像しただろうか。瑤華は物珍しそうにしている彼が目にとめた店を指さし、確認する。

「こちらでよろしいでしょうか」
「瑤華が選ぶ店ならどこでもかまわぬぞ」

 瑤華が選んだのは、老夫婦が経営している肉包子と湯麺を出す小さな店だった。年季の入った木の卓に三人で腰を下ろし、素早く注文すれば、瞬く間に食事が提供される。
 珠児は卓に並ぶのを待ちきれない様子で身を乗り出していた。

「あついよ、へいか。ふーってするの」

 差し出された包子を前に、玄耀は一瞬戸惑いながらも、言われた通り息を吹きかける。
 その様子を見て、珠児がくすくすと笑っている。

「ちがう。もっと、こう」

 小さな口で一生懸命にふーふーと息を吹くのを、玄耀はまじまじと見つめている。常に人を導く立場にいた彼は、幼い息子に教えられ、真剣に聞いていた。

「……なるほど。珠児は賢いな」
「へいかが知らないだけじゃないの?」
「珠児!」