男児であることを隠し、女児の恰好をさせているのは、息子を政治の道具に利用されないため。とはいえ流れ者が多い北方の町の人間はワケアリな瑤華が父なし子の性別を偽っていることに気づいている様子はなかった。
――なのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
白瑤華などというどこにでもある名前をそのままにしていたのが仇になった。見くびっていた、玄耀が直々にやってくる可能性を。
そして意外だったのが、珠児の反応だ。
執務室での再会を終えた玄耀に息子は提案したのだ。おそれおおくも皇帝陛下に。
「じゃあ、こんどは一緒にごはん食べる?」
「今度? 何を言っておる。いま、行こうではないか」
皇帝陛下の気まぐれによって、瑤華や側近たちの意見を聞くこともなく即決され、町でご飯を食べる流れになってしまったのだ!
「んー、いいにおい……」
官舎の門から町へ出ると、冬の冷たい空気のなかにも湯気と香ばしい匂いが立ちのぼっている。
屋台が軒を連ね、蒸籠の隙間から白い湯気がふわりと溢れていた。



