身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~


 死んだ兄たちが相手にしなかった地味な女性に魅入られた皇帝を臣下たちは気の迷いだと一蹴し、子どもができればほかの妃のもとへ通うだろうと楽観している。それでも瑤華は怖かった。自分が皇帝の子どもを産んで、国母となる未来が描けなくて――……


   * * *


 瑤華が玄耀の愛を信じきれなくて後宮から逃げ出したのは、内乱後の残党が皇城に攻め込んできた直後であった。あろうことか敷地内に放火されたのだ。平和を取り戻した景朝で起きた反乱は後宮内に暮らす妃たちにも戦火が降りかかってきた。彼ならこの程度のことすぐに鎮圧するだろう、けれどそのあとは同じような暮らしが繰り返されるだけ。いまなら死んだことにして逃げ出せる――そう、思ったのだ。

 逃げた先で官吏として働きだした。町の識字率はまだ低く、文書を扱える人間が少なかったからだ。
 皇都から来た瑤華は重宝され、官舎での暮らしを手に入れた。戸籍を扱う仕事をしながら静かに暮らしていた瑤華だったが、妊娠が発覚したことで身動きが取れなくなってしまう。
 玄耀との子だ、露見したら大変なことになる。瑤華は悩んだが町の人間に助けられ、無事に珠児を出産した。