さらりと過去の口説き文句を囁かれたが、聞こえなかった振りをして瑶華は皇帝陛下に向けて深く礼をとる。
「ご無沙汰しております。皇帝陛下の賢帝としての評判でしたら、この北方の地まで届いております」
「そうか」
素っ気ない瑶華の態度を珠児は不思議そうな顔をして見ている。なぜかあさまはこの国でいちばん偉い皇帝陛下のまえでつまらなそうな顔をしているのだろう。
「五年前、そなたは死んだなどと後宮の人間は騒いでおったが……これはどういうことだ?」
きゃっきゃと玄耀の前で楽しそうにはしゃぐ珠児のあたまを撫でながら、彼は瑤華へ問う。
怒りよりも戸惑いの方が強い彼の口調に、瑤華は腹を決める。
――もう、ごまかせない。
「この子は珠児。とある事情で出生届には記されていない……わたしの息子です」



