甘すぎるバレンタイン練習

 バレンタインデーが近づく中、私は今日もキッチンに立っている。

「いや、まっず!」

 いや、我ながらあまりに不味すぎる。どれだけ練習しても全く上達しない自分がむしろ凄い。

「お、未花(みか)。チョコ作ってんの?」
「そう。いま真剣だからは話しかけないで」
「いや、冷たっ。チョコみたいに甘くあれよ」
「全然上手く言えてないわっ! 馬鹿なの!?」

 この割と馬鹿な発言を繰り広げる幼馴染の修斗(しゅうと)……に、チョコを渡したくて頑張っている。もう練習から見られているけれど。

「はぁ……あと三十回くらい練習したら美味しく出来るかな……」
「いや、違うだろ。絶対違う」
「うるさいな!? じゃあ、何回作ったら上手く出来るの!?」
「あと一回じゃね? 次で成功するって」
「いや、最高か!!!」

 修斗のそういうところが、大好きで。出来たら美味しいチョコを渡したいと思ってしまう。

「ねぇ、修斗。もしこれが美味しく出来たら食べてくれる?」
「えー……」
「頑張って美味しく作るから!」
「いや、そういう意味じゃなくて。失敗しても食うって意味」
「最高すぎか!!!」

 もう告白しようかなっ!?
 こんな良いやつを逃したら、もう人生で出会えない気がするよ!?
 美味しいチョコを食べて欲しかったけど、もうこの際失敗しても……

「でも、俺。チョコまじで好きだから嬉しいわ」

 前言撤回。
 めちゃくちゃ頑張って美味しいチョコを作ろう!

「で、未花。14日のために練習してるんだろ? 当日晴れると良いな」
「バレンタインを運動会みたいな扱いしないで!?」
「あー、太陽出てたらチョコ溶けるか」
「そういう意味じゃないわ!!!」

 修斗の視線がチョコを向いたのが分かった。

「で、未花。当日は誰にチョコあげんの? 友チョコ用?」
「……本命」
「マジかよ!? 誰用!?」
「秘密」
「俺、欲しいんだけど!」
「え……?」
「だって、本命なんだろ? くれよ」
「え、もう一回言って」
「未花の本命欲しい」
「は!?!?!?!?」

 チョコを作り終える前に気持ちが実りそうです。

 世界よ、ありがとう。

「私のこと好きってこと……?」
「……ちょっと待って。若干緊張してきた。ちょい待ち」

 緊張して頬を赤らめている修斗から目が離せない。そんなことをしていると、私は致命的なミスを犯す。

「あああああ!!!」
「急に何だよ、未花」
「あまりに幸せすぎて、砂糖と塩入れ間違えたんだけど!?」
「良いんじゃね? 俺だったら好きな子から貰えたら何でも嬉しいけど」
「イケメンか!!!」
「で、ちなみに誰用のチョコだったわけ?」
「しゅ……」
「しゅ?」

 ここですぐに「修斗」と言えたら、今まで困っていない。

「しゅ、集会で配る用。全校集会で配ろうかなって……」

 いくら照れたからって、意味のわからないことを口走らないで欲しい。私。

「チョコの個数足りなくね?」

 問題はそこじゃないだろ!
 と、心の中で修斗にツッコミつつ、今しか勇気を出す瞬間はないと覚悟を決める。

 えーい、勇気出せ!私!

「14日の本命チョコも修斗用に決まってるでしょ……」
「チョコのラッピングより可愛いな、未花」
「いや、だから上手く言えてないわ!!! 馬鹿すぎない!?」

 折角の告白でこの雰囲気。もっと甘い空気が欲しいと、欲張ってしまう。


「俺、バレンタインに『彼女』からチョコ貰うの夢だったから、大好きな未花から貰えるの超楽しみだわ」


 やっぱ、もう何でも良いや。だって幸せすぎるもん。


fin.