中宮は笑えなかった


 中宮君と別れたのち、自宅へ向かって帰り道を一人で歩いていく。
 空には月が出ていて、もうすっかり夜といった感じだ。暗くなったなぁとバスに乗る時から感じていたから、時間的にももうだいぶ遅いと思う。
 スマホを確認するとそろそろ二十時になるところ。今回はちゃんと母さんにも遅くなる連絡を入れておいたけど、二十一時には家に着かないと心配してまた外を探させることになってしまうかもしれない。急いで帰らないと。

 街灯はすでに灯りがついていて、帰宅する為に使う昨日のコンビニの道をいつものように等間隔に照らしていた。それを見て、ふと今まで忘れていた昨日の夜のことが頭をよぎり、ぴたりと足が止まる。
 この先に例の看板も例の街灯ももちろんある。昼間は何も感じずに通り過ぎたというのに、夜になるとピリピリと静電気のような恐怖を感じ取るから俺の脳みそは不思議だ。多分何度も怖いことを経験してきたから、こういう場面で危機察知能力が研ぎ澄まされるようになっている、みたいなことだと思うけど……いつか何も感じなくなるのかな。その日はまだ遠そうだけど。
 
 昨日の女の人以降、まだ怖い目には遭っていなかった。中宮のことでそれどころじゃなかったから考える余地もなかったし、気にもしていなかったから、もしかしたら幽霊自体は普通の人に紛れて横を通り過ぎていた可能性もあると思う。でも気づかなければ何も起こらない。感じ取らなければ、向こうだって気づかない。だって幽霊側は感情の揺れでこちらを察知している、みたいなことを中宮が言っていたから、対処としては多分それが最強だ。
 じゃあ今は? 今は、どうだろう。
 気づかないで通り過ぎることができる?

「でも! 流石に同じことが起こるわけないんだし」

 そうだ、そう。だって昨日の女の人は成仏したって言ってたわけだし。それなのにまた他の幽霊にあうなんてこの道は幽霊まみれということになるし、どれだけここで嫌な目に遭った人が居るんだよって話だ。学校とか病院ならわかるけど、普通の一般道だぞ?

「ないない、大丈夫! もし怪しかったら走って逃げればいいだけだ! 対処法はわかってるんだし大丈夫!」

 そう! 気づいちゃっても向こうが気づく前に走って逃げればいい! それで完璧!
 わざと明るい声を出して自分に言い聞かせると、なんだか心が落ち着いた。今までは妄想のせいで幻覚が見えると思っていたけれど、そうじゃないんなら俺の居る場所ならいつでもどこでも起こる未知の怖いこと、というわけではないのだ。やるぞ俺、変わった俺を見せてやれ!

 そうして、気合いを入れて一歩一歩踏み出していったその先のこと。
 チカ、チカ、と、時折点滅するその街灯。
 俯く細身の男がポツンと、そこに佇んでいた。
 不審者注意の看板を通り過ぎて——あれは、昨日と同じ街灯だ。
 
 嘘だろ……。

 真っ暗な夜の中で、スポットライトに照らされたようにその男だけがはっきりと見える感覚があった。まだ距離がある。もしかしたらスマホを見ているだけの普通の人の可能性もある。だけど幽霊だと教えられたからか、普通とは違う重くて冷たい何かを感じる気がする。あの女の子の手の冷たさを、あの女の人の言葉と一緒に入り込んでくる重たい何かを、体が思い出す。

 この感覚は——あれはきっと、幽霊だ。

 確信を持ってしまった。それに気づいてしまったのだ。気づいてしまったなら次に取るべき行動は——そう、走って逃げる。ただそれだけ。
 まだ距離があるこの段階ならいける、いけるはずだ!
 急げ!
 逃げ足には自信があるので、佇む男の顔も見ずにその前を走り抜けて行くことに決めた——はずだったのに。

「なんで逃げるの?」

 耳元で声がして、途端、ビシリと体が強張ってその場を動けなくなる。
 目だけで先の街灯を確認すると、そこに男の姿は無かった。
 つまり、今隣にいるのは——そこに居た、幽霊……!
 ヤバい、ヤバい!
 気づかれたんだ、バレてた! 離れてても関係なかったんだ!
 どうしよう! 

 とにかく逃げなくちゃと、途切れた頭と体の回線をどうにか繋いで動き出そうとすると、

「約束、もう忘れたの?」
「!」

 追撃が来て、腕を捕まれた。びびびっと全身に鳥肌が立ち、恐怖で隣を向くことも出来ない。昨日の女の顔を思い出したからだ。至近距離であの目に見つめられる怖さはトラウマものだった。体に触れる男の手は冷たい。約束だなんて、まるで昨日の幽霊と同じだ!
 また同じことが起こってしまう!

「お、俺じゃない! 約束してない!」
「君だよ」
「俺じゃないっ、勘違いだ! だから、」

 ——いや、待て。違う。
 勘違い、してたんだ。昨日の幽霊も。それで勘違いしたまま満足して、成仏したんだ。
 もしかしてここで俺がその約束を聞いてあげたら、この幽霊も満足して成仏する?
 それが一番の解決策?

「……どんな、約束だった?」

 恐る恐る訊ねると、その答えは返ってきた。

「一緒に記憶を探す約束」

 その瞬間、ハッと弾かれるように隣を向いていた。

「……中宮?」

 俺の声は緊張と動揺で細く掠れていたけれど、奴の耳にしっかり届いたらしい。

「そうだよ、木内君」

 真顔で頷くそいつは、間違いなく幽霊の中宮だった。

「な、中宮か……」

 ヘロヘロと力が抜けていき、思わずしゃがみ込んでしまった。そんな俺に合わせて屈んだ中宮が、「どうしたの?」と訊ねてくる。
 どうしたもこうしたもないんだよ全く!

「お前な! 昨日突然消えといてそれはないだろ!」
「突然消えた?」
「そうだよ! 約束したら突然居なくなって、俺はてっきり成仏したんじゃないかって、」

 そうだ、成仏したと思ったんだ。だからもう、中宮には会えないんだって。
 でも、違った。

「……そういうの、やめろよな。びっくりするだろ」

 急に寂しかった気持ちがぶり返してきて、中宮だったのかと安心した気持ちと、会えて嬉しい気持ちと、あと脅かしやがってとムカつく気持ちなんかも色々合わさって、感情がおかしなことになる。
 どうしよう、鼻がツンとする。
 泣いてたまるかと、中宮から顔を逸らしつつ立ち上がり、自分と戦っていると、

「僕は木内君が居なくなったんだと思ったよ」

 そう、中宮の声が聞こえてきて、

「でもそっか。僕の方が消えたのか」

 独り言みたいにポツリと呟いたその言葉に、なんだかまた寂しくさせられた。

「知らなかったのか?」
「うん。僕はずっとここに居たような気がしてた。目を閉じて開いた瞬間木内君が居なくなってて、なんか避けられてる感覚が伝わってきた、みたいな。時間感覚とか空間感覚みたいな、そういう部分もおかしいんだ。気がつくと別の場所に居たり、途中の時間が切り取られてるみたいな時もある。今回はそれだね」
「お前、急に現れるもんな」
「うん。僕にとっても急なんだよ。もしかしたら幽霊ってそういう仕様なのかもね」

 淡々と、事実を述べるだけ、みたいに中宮は自分の身に起きていることを話す。昨日の中宮もそうだった。感情がないからこんな感じなのかなと思っていたけれど……なんか、違うのかも。もしかしたらこれは元々の性格もあるのかもしれない。だってよく似てる。

「今日さ、お前のこと知るためにその制服の高校に行ってきたんだよ。そしたらお前の弟だって人に会った」
「……弟?」
「そう。しかも双子の。名前は、中宮匠」
「中宮匠……」

 そう呟いた中宮だったけど、なんだかピンときていない様子。それどころか怪訝そうに眉間に皺を寄せている。

「全然思い出せない?」
「思い出せない……それって本当に合ってる?」
「合ってると思うけど。本人と話したし、友達だって人もそう言ってたよ。それにお前と全く同じ顔してたから、これで双子じゃない方がおかしい感じだったけど」
「……僕の名前は?」
「お前の名前は、中宮尊。弟の中宮君はずっと尊って呼んでたから、お前は匠って呼んでたんじゃね? それもピンとこない?」
「…………」

 なんだか怖い顔をして黙り込んでしまった中宮が考え込んでいるようだったので、考えがまとまるまでじっと待つことにする。すると、嫌な顔をしたまま中宮は俺を見て言った。

「もしかして僕と弟、仲悪かった?」

 飛び出したその答えに、思わず驚いてしまう。まさかそんな答えが出るなんて。中宮君の態度からも話の中からもそんな気配は微塵も感じなかったのに。
 だから、「なんでそう思うんだ?」と中宮に訊ねていた。もしかしたら中宮だけが持つ何かを思い出したんじゃないかと思ったから。
 だけど。

「いやなんか、すごいこう、しっくりこないというか、すごい嫌な感覚がある。受け入れ難いというか。でも今初めて聞いたからだって言われたら、それもそうかと納得できる程度ではあるのかな、とも思う……よくわかんないけど」

 残念ながら、はっきりとした記憶のような何かが戻ってきたというわけではないらしい。

「そっか……でも中宮君からは仲の良い兄弟だったって聞いてる。中宮とのこと色々話してくれたよ。中宮と話したいって。会いたいって言ってた」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあ兄弟だからだろ。それで中宮の口から聞きたいんだって、中宮に起こった出来ごとの真実を……あー、俺さ、だから中宮が死んだ時のことも聞いて、というか、事故現場にも行ったんだけど……その話も聞く?」
「聞く」

 即答する中宮から、とてつもない集中力のようなものを感じた。その熱量にきちんと応えなければならないと、言葉に力が入る。

「中宮たちは小さい頃から仲が良くて、よく二人で山に遊びに行ってたんだって。探検したり、昆虫とか植物とかの観察をしたり、庭みたいな感覚だったって言ってた。バスで行ける近場の山で、その日も二人でいつもみたいに山に入ったんだって。でも山の奥まで狭くて荒い道を行った先の、高くなった崖みたいになってる場所から中宮は足を滑らせて落ちたんだ。現場を見てきたけど、確かに崖の縁がその部分だけ大きく欠けてた。下も覗いたら相当高くて、それで深いんだ。落ちた中宮の姿が見えなくて、呼びかけても返事がなくて、中宮君は下まで降りて探したんだけど、そこに中宮は居なかったんだって。警察に連絡して捜索作業が続いたんだけど、結局今もまだ見つからないまま……その、まだ、お前の体は見つかってないらしい」
「…………」
「だから中宮君はお前のこと、まだ生きてるかもしれないって、生きてることを信じてたんだって。でも俺がお前が幽霊になってることを教えちゃったから、中宮君は、受け入れてた。すごく悲しい思いをさせちゃったんだよな」
「なんで?」
「なんでって、そりゃあお前が死んでたなんて、希望が絶たれたようなものだろ? キツいよ」
「なんで?」
「いやわかるだろ、お前だって。双子の弟として中宮君はお前のことを自分の一部だと思ってたって言ってたけど、お前は思ってなかったの? 記憶がなくても想像ぐらいつかないか?」
「なんで?」
「はぁ? だからお前なぁ、こっちは真剣に、」

 言ってんだよ、と文句を言ってやろうとしたところで、ハッとした。目を向けた先の中宮が、真っ黒な目をしてこちらを見ていたから。
 そうしたら、さっきからなんで?としか返ってきていないことに気がついたから。不自然なほどに、一定のトーンで。

「なんで?」

 そう、再度口にする中宮は俺を見ていた。けれど、意識は俺の元にない。その真っ黒な瞳には何も映していない。

「ど、どうしたんだよお前……」

 まるで別の生き物になってしまったみたいな感覚があった。俺が余計なことを言ってしまったのだろうか。もしかしたら記憶がないことで上手く保っていた何かが崩れてしまった、とかある? まるでバグを起こしてるみたいに見える中宮が、怖い。

「中宮、その、聞こえてるか?」
「なんで?」
「俺が見えてるか? 返事をして欲しい」
「なんで?」
「だってお前、変になってて怖い。何考えてるかわかんないからこわ……お、教えて欲しい」
「なんで?」
「教えて欲しい! 今の自分について言葉にしろ! なぁ、中宮!」
「なんで? なんでこんなに受け入れられないの?」

 訴えかけるように声を上げると、返ってくる中宮の言葉が変わった。中宮の真っ黒な瞳がゆらりと揺れると、そこに透明度が戻ってくる。が、苦しそうにいつもの無表情を歪ませると、生まれたそれは、外へ飛び出してきた。

「何も理解できない。受け入れられない。なんで? なんで自分のことだってわかってるのに、この拒否感は何? 嫌悪感すらあるこの感覚は? なんでなの? 僕は僕なのに。記憶を取り戻したいのに、なんで?」
「中宮……」
「わからない、わからないんだよ。ねぇ、君にこの気持ちはわからないの? 君が聞いてきて僕に教えたんだよ、君にはわからないの?」
「わ、わからないから落ち着けよ、とりあえず」
「なんでわからないんだよ! 君は幽霊のことがわかるんじゃないの? ずっと幽霊に付き合ってきたんだろ、だったら助けてよ! 約束しただろ! 僕を助けてくれるんじゃなかったのか!」

 こんなに大きな声を出す中宮は初めてだった。その中宮の心の叫びが俺を責めている。と同時にそれは、俺に縋っていた。俺に、助けを求めてる。これはそういう叫びだと気づくと、その事実が俺に冷静さを取り戻させた。

「……助けるよ」

 頭を掻きむしり、叫び出す中宮はどう見てもパニックに陥っていて、俺の声も届いていないようだったので、その両腕を掴んで「こっちを見ろ」と強制的に俺の方へ意識を向けさせる。
 すると、ぴたりと動きを止めた中宮がぐるりと俺に目を向けた。瞬きの一つもしないそこに、俺がきちんと映っているのをしっかりと確認した。
 よし、大丈夫。 

「いいか、中宮。申し訳ないけど、俺は今まで何度も幽霊に会っていたとしても、幽霊に対する知識なんてこれっぽっちもないんだよ。だって幻覚だと思って、存在してるものとして向き合ってきてないんだから。だから俺は幽霊がどんな気持ちでここに居るのかとか、どんな気持ちになるのかとか知らないし、その助け方もわからない。でもさ、それでもお前のことはわかりたいし、助けたいって思ってる。なんでかわかるか?」
「……なんで?」
「友達だからだよ。俺はお前の友達だ。わかるか? 幽霊のことがわかるから、幽霊は成仏させないと可哀想だから、そんな理由で動いてるんじゃない。俺はお前の友達だから、だから助けてやりたいっていう自分の感情で動いてるんだよ」
「…………」

 フッと、中宮の両腕から力が抜けたのでそっと手を離した。また黙ってしまった中宮に俺の言葉がどう届いているのか心配になって、次の揺れを見逃さないようにその目を見つめていると、先ほどまでとは違い、穏やかな、凪いだ瞳で中宮は俺のことを見つめ返した。
 そして、

「……木内君は僕の友達なの?」

 今までのことが無かったかのようにキョトンとして、子どもみたいに純粋な声で、俺に訊ねてきた。
 ……全く、困ったやつだな。

「自己紹介して握手しただろ。忘れたの?」

「約束忘れてるのお前の方じゃん」と言ってやると、スッと真顔に戻った中宮が、「本当だ」と頷いた。

「そっか。木内君は僕が幽霊だから今までの幽霊達みたいに成仏させるための最善策として付き合ってくれてたんじゃなくて、友達として付き合ってくれてたのか」
「当たり前だろ。ただの幽霊だったら関わろうともしてない」

 そう答えると、「始めも走って逃げようとしてたもんね」と、いつもの調子で答えが返ってきて、すっかり中宮が落ち着いたことがわかった。
 よかった……大変なことになったりしないで。でもさっきまでの人が変わったようなあいつは何だったのか。もしかしたら記憶について触れたことで、心の中で眠っていた感情が一時的に溢れ出たのかもしれない。それとも、一瞬でコロっと変わるこの感じも幽霊の特徴の一つなのか……わからないことが多いけど、気分の浮き沈みの激しさは一般的な幽霊像にもある気がする。感情に敏感だからなのか?

「まだ結構離れてたのにあの距離でも俺が気づいたのバレてんだもんな……幽霊って怖い」
「怖がらせてごめんね」
「いや、中宮なら良いよ、仕方ない。でも他の幽霊たちはやめて欲しい」
「でも幽霊はみんな木内君みたいな人を求めてるから、それも仕方ないね」

 そんな、諦めな、みたいなテンションで言われてもとても複雑だ。俺は求めてないんだから求められない人間になりたいんだけど……その方法もいつか見つかるといいんだけどな。
 ふう、と一息つくと、中宮も同じように息をついて、独り言みたいに言った。

「じゃあ結局、木内君もこの受け入れられない感覚についてわからないのか……頭ではわかってるんだけどな、それが自分の求めていたはずの記憶なんだって。手に入って嬉しいはずなのに、この気持ちの悪さは何なんだろう」
「何なんだろうな……思い出したくない何かでもあるのかな、中宮の中に」
「それも含めて全部思い出したいんだけど」
「そうだよな、そうじゃないとここに居る目的がわかんないままだもんな。何なんだろうな、ほんと……」

 うーんと二人で悩んでみても、ここで解決しそうにない。
 情報が足りない? きっかけになる刺激とか? もっと違うやり方が必要なのかも。

「まぁ、とりあえずさ。俺でも悩みを共有してわけあうことはできるし、一人でパニックになりそうになったら今みたいに言葉にして教えてくれよ。そんで一緒に対処してこう」
「悩み……あぁ、そっか。これって僕の悩みってことになるのか。なるほど……」

 真面目にうんうんと頷きながら一つ一つ理解していく中宮に、つい笑ってしまった。きっと真面目なんだろうな。向き合って、理解して、納得して、落ち着いて、というサイクルが、幻覚じゃなくて幽霊だったのだとわかった時の俺のものとよく似てる。自分の身に起こるわけのわからない現象って本当に怖いから。
 でも大丈夫。中宮には俺が居る。俺が居るし、中宮の弟も居る。

「その拒否感みたいなのがなんなのか、もしかしたら直接弟に会ったらまたわかることがあるかも。とりあえず明日、一緒に会いに行くか?」

 俺の提案に、中宮は、そうか!と閃いたような反応をしたのち、大きくうんと頷いて、またフッと消えた。きっと中宮の中の何かがこの間みたいに満たされたのだろう。
 また置いてきぼりかよと思いつつ、とりあえずこれで一旦落ち着いたわけだ。このあと今起こったことを中宮君に連絡して、早速明日また会えるか聞いてみよう。

 家に帰ってから中宮君に連絡を取るとすぐに返事があって、また中宮君の高校の前で待ち合わせることになった。連絡がついたことでホッと一息ついたけど、ふと気がつく。あいつ、明日の感覚あるのかな、と。
 自分も急だと思ってる、みたいなこと言ってたしな……今自分が消えたこともわかってないよな、多分。
 大丈夫かなと不安に思いつつも、山登りの疲れからぐっすりと眠りにつき、そして翌日。やっぱり中宮は現れないまま俺は一人で中宮君の高校へ向かうこととなってしまった。