学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった


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もう才野くんは練習に参加することはないかと思われたが、次の日もちゃんときた。しっかりと体操着もきている。だが、輪に入ろうとはせず座って地面に置いているボールを片手でコロコロと揺らしている。

「昼休みしかシュート練習できないから、とりあえず慣れるまで打ち続けようぜ」

と、片手でボールを掴みそのまま野球ボールのように投げた宮瀬くん。
リングに当たることはなくボードに当たったバスケットボール。「ああ…」とふやけた声を出して、あらぬ方向に飛んでいったボールを追っていく宮瀬くんの姿に吹き出すように笑った。

「ノーコンの宮瀬に、サボってる才野に、運動苦手の田中、俺もそんななに上手くないし、これ本当に大丈夫かな。影井の足ひっぱる自信しかないわ」

小野寺くんが苦笑いでそう言う。
「そんなことない!」と全力で首を横に振った。
足引っ張る云々の前に、俺もそんなに上手くないのに。

「正直言うと俺、中学あんまり、というか、ほとんど試合に出てないんだ」

「え、そうなん?」

「うん、だから俺のほうこそ足引っ張る自信しかない」

「いやいやでも経験者と未経験者の差はでかいと思うよ。どうせだったらすぐできる必殺技とか教えてくれよ」

「必殺技…」と弱々しく肩を上げた。そんなものはないが、すぐに「ない」とは言えない微々たるプライド。
粛々と基礎練習をしながら何度も妄想という名のイメージトレーニングをした。それが現実になることなど絶対にないのに。

「小野寺くん、ここに立って」

自身の前を指差せば、小野寺くんは「おう」とすぐさま前に移動した。
小さく息をはいてドリブルをつく。

「試合には出てなかったけど、こういうのできたらカッコいいなっていうのはあって、何度も妄想だけしてた」

「カッコ悪いでしょ」とへらりと笑えば近くに寄ってきた田中くんが口を開く。

「ああ、アクション物の映画とか観てると自分もどうやって敵を倒すかってそんなこと考え始めるよね。妄想の中ではめちゃくちゃすごい動きしてるもん、俺も」

「まあ、そんな感じかなあ」

と、あまりピンときていないが田中くんの言葉に頷いた。

「何々、影井ダンクでもしてくれんの」

「できるわけないだろう、君たちより何センチ背低いと思ってんだよ」

宮瀬くんの好奇心の塊の声にそう返す。
ちらりと少し離れてみている才野くんに視線をやった。彼もこちらをみている。
すぐに離れていきそうで、「必要ない」と容易く自分の世界から除外されそうなのに、時々、もしかしたら才野くんにとって自分はちょっとした特別になっているのかもと期待する。仕方ないじゃないか、だって、
ーーー「影井 楓」
心理テストをふっかけたのは紛れもなく自分だけれど、きっかけを作ったのは才野くんだ。

少しの嫌味も込めて、才野くんだけに分かるように小さく舌をだして挑発した。そしてすぐに視線を逸らす。
目の前には自分より背の高い小野寺くん。

足の底に力を込めた。
ドリブルをしたまま小野寺くんの方に走る。

「おっ」

向かってくる俺に小野寺くんが少し身構えるように声を出した。ぶつかる寸前のところで体を捻って片足を軸にしたまま背中側からまわる。
試合をしている最中であれば、こんなに簡単に抜くことなんてできない。

前に誰もいなくなった状態でシュートを放てば、運良くネットに吸い込まれていった。

「おおおお」

後ろで小野寺くんのそんな声と小さな拍手が聞こえて少し背中を丸めて振り返った。

「必殺技というか、これはバックターンっていって相手を抜くための技術で…上手い人はもっと早くて」

「いやいや影井すげえよ、なあ才野」

小野寺くんはそう言ってなぜか才野くんに振った。
経験者かもしれない才野くんに何か言われるのは少しこわい。先ほどのちょっとした挑発も含めて殺されるかも。
と、おそるおそる才野くんの方を見れば、彼は拳をだして親指を下に向けた。

「最高」

「言葉と指の向きが合ってないよ才野くん」

やっぱり才野くんは、自分のことが嫌いなのだと思う。