学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった


責めるような声。俺は、何か怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。

「べ、別に何も、ただこの前の心理テストのことで」

「心理テスト?」

「…俺のことを嫌ってるって結果がでちゃって、俺たちが気まずくなってんじゃないかって気にしてた」

「そのことは違うって話になっただろ」

怪訝な顔を崩さないまま、至近距離の才野くんがそう言う。

「そのこと、あの2人に何も言ってないの」

まあ、わざわざ言うことでもないかもしれないけれど勘違いさせてしまっているとしたらモヤモヤは残る。そして、変に気を遣わせた結果がこれだ。
腰にまわった才野くんの腕がなぜか強まった。

「わざわざあいつらに言う必要あるのかよ」

「言ってくれた方が助かるんだけど」

「影井のこと、『嫌い』じゃないって?」

「っ」

わざとらしく『嫌い』という言葉になぜか含みを持たせるような言い方だ。

「否定すると、余計勘ぐりたくなりそうだけど」

「…なんで?」

「知らない、人間そういうものだろ」

「言ってる意味が、よく…」

「いいよ、分かんなくて」

自分から近づけた距離を、勝手に突き放すように俺を解放する。腰にまわった腕がするりととれた。

「おい影井大丈夫かあ!」

転んだ自分をみて心配してくれたのか、宮瀬くんが駆け寄ってきた。その後ろを追いかけるように小野寺くんと田中くんも。
自由になった体を勢いよく起き上がらせる。
「大丈夫!」と手についた砂を払っていれば、才野くんが静かに立った。

「才野、あんまり影井をいじめるなって」

小野寺くんの言葉に、才野くんは横目で俺を一瞬視界にいれて小さく笑った。

「別にいじめてない」

「嘘つけ!お前、この前の心理テストやっぱり当たってんじゃねえの」

宮瀬くんが体を才野くんに軽くぶつけてそう言う。
才野くんはその少しの衝撃に揺らぐこともなく、慣れたように地面に転がったボールを拾った。

「…どうだろうな」

静かにそう言って、歩いていく才野くん。
宮瀬くんと小野寺くんは俺と才野くんを交互にみたあと、気まずそうにその背中を追いかけていった。

「大丈夫?影井くん」

「うん、大丈夫。練習妨げてごめん田中くん」

やっぱり、俺には才野くんの考えていることが分からない。
確かに、宮瀬くんと小野寺くんにわざわざあの心理テストの誤解を解くようなイメージは才野くんにはない。
しかし、変な気を遣わせるくらいなら才野くんから説明をしてほしい。
あの時はただ目の前にいたから名前を出しただけの気まぐれで、俺のことは特になんとも思っていないし、友達という中にも入っていないって。
ーーーうわ、なんだかそれはそれでモヤモヤする。

「才野くんって、なんだか冷たい雰囲気あるよね」

そう言って隣で眼鏡を押し上げた田中くん。
否定も肯定もせず、「あはは」と笑った。

「まああれはあれで魅力的というか、さながら黒澤明監督の『用心棒』にでてくる桑畑三十郎を彷彿とさせるミステリアスさがあります」

「田中くん、ごめんよく分からない」