学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった



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「では、球技大会当日まで各々しっかり準備をするように」

黒板に書かれた文字を目で覆う。声に出さないまま、小さく口を動かした。
バスケットボール、田中、宮瀬、小野寺、才野、影井。

「マカ先も分かってるよなあ、俺たちを同じ競技にするなんて」

「小野寺それな!才野と球技大会なんて女子からの注目間違いなしだろうな」

「才野人気にあやかんなよ、宮瀬」

俺の前の席に寄ってきた2人がそう言う。
小野寺くんが言った、『マカ先』というのは担任、真壁先生のことで、どういう訳か競技は自分の希望ではなく担任が振り分けることになっていた。
適当な具合で振り分けられたのだろうと予測できるが、まさかバスケとは。

そしてもう関わることがないと思っていた彼らと一緒だなんて。

「うちの高校、バスケ部がないから経験者いれば有利だよな、もしかして影井は経験者だったりする?」

「え?」

小野寺くんに問われ、分かりやすく動揺していれば「だってそれ」と机の横にかかっている通学鞄に小野寺くんの人差し指が向く。

「鞄にボールのストラップついてる」

「あ、ああ、えっと、これは」

小野寺くんのそれに戸惑いながらも、へらりと笑った。隠すように鞄を引き寄せてストラップを手のひらで包み込んだ。
握り締めれば存在が消えてしまうほどの小さなそれを、今のように握ったのはいつぶりだろうか。

「まじか、影井経験者!?」

俺の机に手を置き、期待を込めた瞳で前のめりに俺にそう聞いてきたのは宮瀬くんだ。しまった、変な期待をさせてしまってはまずい。だって、

「う、うん、中学時代はバスケ部だったけど…俺、」

「ラッキー、だったら影井に特訓してもらおうぜ」

ーーー補欠のベンチ温め係だったんですけど。
言うタイミングを逃しているうちに、宮瀬くんがもう1人腕を引いて連れてきた。

「田中くんも未経験者だって影井。特訓の腕が鳴りますねえ」

宮瀬くんがそう言って田中くんの肩に腕をまわして横に体を揺らしている。
田中くんはその圧に身を任せるまま、華奢な体がぐわんぐわんと揺れていた。かわいそうに。
「ええ…」と、声を出した。嫌などではない、自分は教えられるほど上手くないのだ。

「3人教えるのも4人教えるのも変わらないだろ、田中くんは何部?ちなみに、俺たちは全員帰宅部」

宮瀬くんの問いに田中くんは言いにくそうにメガネを指先で押し上げた。

「…映画研究会です」

「腕が鳴るな、影井先生よ」

「小野寺くんまで…」

それにしても、と俺はこの状況を静かに眺めている才野くんに瞳を向けた。
ふと思い出されるのは、才野くんの持っていたシャーペン。小さくバスケットボールが印字されていた。
ストラップで俺が経験者だと断定するなら、彼だって。

「あの、才野く…」

「よおし、さっそく今日からみんなで特訓だな!球技大会まで休憩時間とかコート争奪戦らしいからみんな早めに集合してしっかりゴール使わせてもらおうぜ」

大きな声の者は強い。宮瀬くんが上に掲げた拳にすぐについてきたのは小野寺くんと圧に負けた田中くん。
遅れておずおずと腕を上げた。
才野くんは、けだるそうに一瞬あげてすぐに下ろした。