学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった



ーーーー

本当は知っていた。
もちろん、最初からではない。

スマホの画面をつけると充電が残り3%の表示だったため、周りの雑音をシャットアウトするために着けようとしていたイヤホンを鞄にしまった。

帰りの電車で揺られながら、いつもと変わらない外の景色を眺める。

「ねえ、ちょっとまえに大学の教授から教えてもらった心理テストがあるんだけど」

自分が立っている幾分か先でそんな女の声が聞こえた。
『心理テスト』という言葉に反応してしまったのは、先日のことがあったからだ。

俺はどうやら、気になっているやつのことを心の奥底では『嫌いな人』と認識しているらしい。

何かのバグが起きているのか、そんな風に考えたが、よく考えたらあんな小学生しか盛り上がらなような心理テスト誰が信じるんだという気持ちが勝る。

「ーーーで、このA.B.Cに思い浮かんだ人の名前を当てはめてみるってやつなんだけど」

ちらりと女の集団の方に目を向けると、結果を知らない女2人が宮瀬や小野寺のように目を輝かせながら自身の脳裏を探っている。

Cは影井 楓。

俺は、ただ思い浮かべた人を言っただけだった。
結果が分かっていれば、名前、ださなかったのに。
だから、ただの心理テストだろう。バカバカしい。

先日から、そんなあやふやな感情がずっと蠢いている。

影井に嘘じゃないかどうかも確認した。戸惑いながらも嘘じゃないと放つ。あの結果が『好きな人』であればどんなに良かったか。

ああ、そういえば、球技大会一緒になれたな。
俺たちが嫌いなバスケ、だけど。

影井、やっぱり自分のこと、覚えてないよな。

「で、Cはね、『好きな人』なの」

自身の靴の先を見ていた時、聞こえたその言葉。
ぱっと顔あげる。今、なんて言った。

「え!当たってる!」

「私も!」

「ちょっと、声のボリューム落として。イケメンがこっち見てる」

女たちの目がこちらに向けられたので、俺は再び外の方に視線を向ける。
Cは、好きな人。

そうか、なんだ、やっぱりな。
いつもと変わらない景色に少し色がついたように思う。自分でも馬鹿げているとは思うが、それでもよかった。

でも、影井はなんで嘘をついたんだろう。

『好き』とは正反対の言葉。そうであってほしいという願望だったのだろうか。
再び、一気に視界がモノクロになる。

だけど、せっかく同じクラスになれて、影井の前の席にもなった。
しようもない心理テストでも、距離は少し縮まった。

しかし、影井は一向に自分のことを思い出さない。まあ別に思い出さなくてもいいか。

あわよくばあのストラップの持ち主を永遠に探し続ければいい。
そうすれば、影井の中で俺の存在は消えないのだから。

少しだけ上がる口角を隠すように片手で自分の口を覆う。気持ちをぶつけすぎないように、少しずつ、少しずつだ。

ーーーさあ、これからどうしよう。