学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった






「お前、もう少しこっちにいたら?」

駅まで着いて、柴田からそう言われる。
「え?」と首を傾げると柴田はスマホの画面を明るくして時間を確認して軽く笑う。

「本当はもう少し遊ぶ予定だったし、まだ大丈夫だろ」

「柴田も一緒に」

「いや俺はいい、帰るわ」

「なんで?」

「そりゃだって」

柴田の瞳が俺の隣に立っている才野くんに向けられる。「なあ」と。なにが、なあ、だ。

「俺は今日はおしゃれなカフェとパフェを写真におさめることがミッションだったわけ、もうクリアしたわけ、ということで帰ります。じゃあな」

早口でそう言ってさっさと改札を通っていく柴田。
「また明日!」と声をかけると振り向かないまま軽く片手をあげていた。
柴田が見えなくなって、俺は才野くんの方を見る。

「俺も、帰ったほうがいいよな」

「なんで?」

「そ、そもそも、今日は会う約束してなかったし」

「約束してないと、会ったらだめなわけ」

「そういうんじゃ…」

並んでいた手が、繋がれる。鏡に映った自分の顔を思い出した。見られたくなくて顔を背ける。
才野くんは手を繋いだまま、「行こう」と歩き出した。

「誰かに、見られないかな」

「学校から遠いし大丈夫だろ、てか嫌なら離すけど」

「…いや、では、ない」

届いているかも分からない声でそういえば、才野くんは笑った。「じゃあいい」と握っている手にほんのりと力が入る。
顔に熱がたまっていくほどに隠すように地面に視線を落としていく。

「パフェ、美味しかった?」

「うん、上の部分、溢したけど…」

「影井らしい」

「それ、褒めてないだろ」

と、顔を上げると才野くんと目が合ってすぐにまた落とした。やっぱり無理、直視できない。
と、

「っ!」

ぐいっと手を強く引かれた。体ごと引き寄せられて明るかった視界が一気に薄暗くなる。

「さ、才野、くん?」

気づけば、人が通っていた道とは違う細い抜け道のようなところにいた。
人通りもなく、薄暗い。
背中には壁を感じて、近い距離に才野くんがいた。

才野くんの額が自分の額にあたり、少し上にあげるように才野くんの顔が動く。

「…やっと、こっちみた」

「っなんで」

「周りの目が気になるようだったし、それに」

才野くんがゆっくりと俺の体を引き寄せて抱きしめた。耳元にきた才野くんの唇が言葉を紡いでいく。

「今日、触れてないし」

「っ」

ぎゅっと目をつぶった。才野くんのまわった腕が力が入って逃げられないことを理解する。
聞きたいこと、たくさんあるのに。
頭がうまく回らない。
才野くんの肩に埋まった自分の唇がこもるように「才野くん」と動いた。

力なく落ちていた腕をゆっくりと持ちあげる。

「…影井」

糖分不足などとはよく言ったものだ。あれだけの大きなパフェを食べておいて。じゃあ、何を求めていたのだろう。

聞きたいことなんて、たくさんある、1つずつ1つずつ確認して、近づいて、いずれ俺は何に気づくんだろう。
才野くんの背中に手をまわした。

「めずらし」

今、才野くんはそう言ってクスクス笑っているが、どんな顔をして笑っていて、どんなことを考えて、何を見ているか、全部知りたいなんて、そんなの、

「影井」

好き、以外になにがあるんだろう。

少し離れた隙間を埋めるように才野くんが俺の名前を呼んでキスをする。
いつまでたっても慣れないキス。

「っん」

才野くんの手のひらが俺の首元にくっついて、その熱が伝わってくる。

「影井」

「っ」

唇が少し離れて固く閉じていた瞳を少し開ける。才野くんの親指が俺の唇に触れた。

「口、あけて」

「…え?」

「もっと」

才野くんの甘さを帯びた声。ゆっくりと口を開ければ才野くんの親指の先が舌に触れた。
に、にげ、

「…っん」

たい。そう思ったのに、その甘さを欲しているような自分も確かにここにいて。
深くなったキスがこれは夢じゃないのだと分からせてくる。

才野くん、才野くんはいつになったら俺を好きになる?
甘さに隠れた過去を話してくれる時はくるのだろうか。
俺は、もっと、才野くんのことを知りたい。