学校イチのイケメンに心理テストしたら好きな人が俺だった


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「やっぱりこういうのは彼女ときたかったなあ」

「宮瀬、お前彼女いないじゃん」

「お前もだろ!小野寺!」

そんな宮瀬くんと小野寺くんが横に並んで軽く戯れあっているのを見て笑ったあと、雲ひとつない晴れ渡った空を見上げた。
俺の隣に立った田中くんが「天気いいですね」とにこやかに話しかけてくる。それに頷きながら、「本当に」と返事して、ふと少し後ろを歩く才野くんの方をみた。

「なに」

「いや、なんでも…」

才野くん、本当に来たんだなあ、と。
みんなで予定を合わせてきた水族館。

入り口付近には写真スポットもあり、宮瀬くんと小野寺くんがパネルに顔を挟めながら「誰か写真撮って!」と楽しそうな声をあげていた。

入る前からこんなにハイテンションで、この人たちは疲れないのだろうか。

「先に入る」

「あ!才野!無視すんなよ!てめえどんだけ早く水族館堪能したいんだよ!」

「違う、早くまわってさっさと帰んだよ」

才野くんが宮瀬くんをあしらいながら颯爽と歩いていく。クラスでみている情景とさほど変わらないけれど、みんな制服ではなく私服。休日に遊ぶことになるとは予想もしていなかったメンツだ。なんだか不思議な気持ちになってきた。

宮瀬くんが慌てた様子で才野くんを追いかけていくのをぽけっと眺めながら彼らの後ろを歩いていれば、才野くんと宮瀬くんのやりとりをゲラゲラと笑っていた小野寺くんが近づいてきた。

「才野がこういうのに来るの珍しいんだよな」

「そうなんだ」

「やっぱり」と、数回頷いていると小野寺くんは少し揶揄い口調で飛び跳ねるように俺の前に立った。

「影井が行くからって感じだったよな」

「え?」

「あ、それ自分も思いました。俺が皆で一緒に行こうって提案した時複雑な顔してましたけど、影井くんが賛成したくれた瞬間『行く』って即答でしたよね」

田中くんの言葉に小野寺くんが「それな〜」と揶揄いの声色を変えない。
自分が行くから、才野くんも来てくれたって?そんなの違うに決まってる、どうせまた才野くんの気まぐれだ。
そう言い聞かせるも、顔に熱がじわじわと溜まっていく。

「嫌よ嫌よもなんとやら、か?」

「うむ、この前宮瀬くんが言ってた、影井くんが才野くんに仕掛けたという心理テストの話ですか?」

仕掛けたって。
そうか、この前のチケット云々の流れで田中くんの耳にも入ってしまっていたのを忘れていた。宮瀬くんめ。

「そうそう、なぜかあの時Cに影井の名前が上がったんだよな」

「それはどういった心理テストなの?」

田中くんが眼鏡を押し上げる。そこを掘り下げるのだけはやめてほしいというポイントをえぐり掘ってきたこの人たち。
あわあわと両手を彼らの前で揺らした。

「そ、その話はいいからっ!」

彼らの好奇心を打ち消すようにそう言った。タイミングよく、入り口から宮瀬くんが「早く受付するぞお前ら!」と声がかかる。
「早く行こう」と2人を急かせながら、安堵の息をついた。




「あれ、影井そのストラップ2つもってんの?」

「え?」

チケットを取り出して受付をしている間、小野寺くんの視線が自分の肩からかけていた小さめの鞄に向けられる。肩紐と鞄を繋ぐ金具部分につけられているそれが、小野寺くんの指先で軽く揺れた。

「バスケットボールのストラップ、学校の鞄にもついてたよな」

「ああ、えっと、これは」

反応に困っていると、宮瀬くんや田中くんが「本当だ」とそのストラップを覗き込む。
これは、さすがに逃げられないな。
まあ、言ってどうにかなるものでもないし。

「違う鞄で外に出る時は付け替えてるんだ」

「そんなにお気に入りなの?」

田中くんの問いに「いや、そんな感じでもなくて」と。でも、お気に入りではないというのもさすがに違うのかな、なんて思考がぐるぐるとまわる。

「これ、実は俺のじゃ」

「お待たせしましたー、チケット5人分確認したので、中へどうぞ。パンフレットもお渡ししておきますね!」

館内のお姉さんの元気な声に埋もれた自分の声。
宮瀬くんたちは「あざーっす!」とパンフレットを受け取りすでに中へと続く非日常感に包まれた空間へと意識が向いていた。俺のストラップなんて水族館の魅力にはそりゃあ負ける。

先に中の方へと行ってしまった、宮瀬くん小野寺くん田中くんの背中姿を見つめながら苦笑いを浮かべる。まあ、彼らには関係のないことだ。

「だっさいストラップ」

隣に立ってそう言ったのは才野くん。
小さな声だったけれど、ちゃんと自分の耳には届いていてむっと顔を顰めた。

「だ、ださくないし、なんだよ、今日初めて話しかけてきたと思ったら…そんなことわざわざ言わなくていいのに才野くん」

「本当のこと言って何が悪い」

「はああ?」と声を出せば、「こういうところでは静かにしろよ」とカウンターをくらう。なんなんだよ、本当。
軽く笑って中へ入っていく才野くんを慌てて追いかけた。

「だいたい、才野くんにこのストラップのよさを分かってもらおうなんて思ってないし」

「はいはい」

「思っててもわざわざダサいなんて言わなくてもいいし」

「影井」

「才野くんはいつもいつもそうやって俺につっかかって」

「影井」

「もう、なんだよっ」

「うえ」

「うえ?」

と才野くんが指し示した方に顔を向ける。
気づけば水槽のトンネルのような場所にきており、見上げた先には名前も知らない大きな魚が横切っていく。
青色に包まれた空間を色付けるように魚がそこら中に舞っている。

「おおお、すごい!」

身を逸らせながらあらゆる方向に目を向ける。
水族館なんて小学生ぶりくらいだったが、存外楽しめるかも。
横切った魚を指さしながら「でかい魚!」と高校生とは思えない語彙力を響かせる。

すると、少し前を歩いていた才野くんが吹き出すように笑った。
そして笑みを堪えるようにこちらを振り向く。

「なんだよ」

そう問えば、才野くんは「いや」と言うがその肩は揺れている。なんだよ。

「上機嫌になって良かった」

「なっ…」

「お、あっちクラゲだって」

君だって少し楽しそうじゃないか。