星座が示す、144通りの恋

第97話 毛布で丸くなる角
(射手座君♂x牡羊座ちゃん♀)

 五月の雨上がりの朝、咲良の部屋で、夕方の匂いがしていた。窓の外が早く暗くなり、部屋の中だけがやけに明るく見えた。
 交際が始まって日が浅く、咲良は足をすり合わせて寒さを追い払う。彗は無言で毛布を持ってきた。
 ただの道具のはずなのに、触れた瞬間、心までほぐれていく気がした。
 途中で咲良が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、彗は立ち止まる。
 実は彗は昨日、同じ毛布をもう一つ用意していた。理由は、咲良が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。彗は「外の空気、吸おう」と言いながら、そっと手渡した。
 咲良は受け取り、しばらく黙ったあと、「先に動いたほうが早い」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。彗は「じゃ、今使おう」と前を向き、咲良はその背中に小さく「うん」と重ねた。
 帰り道の途中、彗は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。咲良は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。彗は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 帰り道の途中、彗は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。咲良は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。彗は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 帰り道、彗は「次は咲良のやりたいことを先に聞く」と言った。咲良は少し考えてから、毛布を軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。
【終】