第96話 ざると帰り道
(蠍座君♂x魚座ちゃん♀)
土曜の昼下がり、商店街の惣菜コーナー前で、雨粒の名残がアスファルトに光っていた。美羽乃はエプロンのひもを結び直し、冬真は袖をまくった。
一緒に帰る日が増えた頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは簡単なおやつを作る。
鍵になるのがざるで、手順がずれると味も形も崩れる。美羽乃は「できるかな」と首をかしげた。
簡単なおやつを作るを始める前に、美羽乃が立ち止まった。「ねえ、約束して」。冬真が見返すと、美羽乃はざるを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、美羽乃は目をそらす。冬真は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言ってざるを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。美羽乃は目を細め、「夢みたい」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、冬真は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。美羽乃は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。冬真は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
美羽乃は歩きながら、ふとざるを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。冬真が「うん」と待つと、美羽乃は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、冬真は「次は美羽乃のやりたいことを先に聞く」と言った。美羽乃は少し考えてから、ざるを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言いかけた言葉が、ちゃんと形になった。
【終】
(蠍座君♂x魚座ちゃん♀)
土曜の昼下がり、商店街の惣菜コーナー前で、雨粒の名残がアスファルトに光っていた。美羽乃はエプロンのひもを結び直し、冬真は袖をまくった。
一緒に帰る日が増えた頃、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは簡単なおやつを作る。
鍵になるのがざるで、手順がずれると味も形も崩れる。美羽乃は「できるかな」と首をかしげた。
簡単なおやつを作るを始める前に、美羽乃が立ち止まった。「ねえ、約束して」。冬真が見返すと、美羽乃はざるを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、美羽乃は目をそらす。冬真は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言ってざるを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。美羽乃は目を細め、「夢みたい」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、冬真は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。美羽乃は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。冬真は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
美羽乃は歩きながら、ふとざるを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。冬真が「うん」と待つと、美羽乃は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
帰り道、冬真は「次は美羽乃のやりたいことを先に聞く」と言った。美羽乃は少し考えてから、ざるを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の言いかけた言葉が、ちゃんと形になった。
【終】


