第91話 除菌ジェルのせいにして
(蠍座君♂x天秤座ちゃん♀)
朝練のあと、図書室の前で、空気が少しひんやりしていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
一緒に帰る日が増えた頃、凌は一点をじっと見つめて集中する。莉奈はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には除菌ジェルがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
玄関のにおいを消すを始める前に、莉奈が立ち止まった。「ねえ、約束して」。凌が見返すと、莉奈は除菌ジェルを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、莉奈は目をそらす。凌は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言って除菌ジェルを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。莉奈は目を細め、「それなら両方できる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、凌は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。莉奈は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。凌は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
片づけの最中、除菌ジェルが机から転がりそうになり、凌が反射で押さえた。その手の速さに莉奈が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。凌は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、凌は「次は莉奈のやりたいことを先に聞く」と言った。莉奈は少し考えてから、除菌ジェルを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】
(蠍座君♂x天秤座ちゃん♀)
朝練のあと、図書室の前で、空気が少しひんやりしていた。清掃当番の札が揺れ、誰かの足音が遠くへ消えた。
一緒に帰る日が増えた頃、凌は一点をじっと見つめて集中する。莉奈はそれを追いかけながら、ほうきの柄を握り直す。
今日の担当は玄関のにおいを消す。手元には除菌ジェルがあり、使い方を間違えるとベタついたり匂いが残ったりする。
玄関のにおいを消すを始める前に、莉奈が立ち止まった。「ねえ、約束して」。凌が見返すと、莉奈は除菌ジェルを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、莉奈は目をそらす。凌は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言って除菌ジェルを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。莉奈は目を細め、「それなら両方できる」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、凌は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。莉奈は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。凌は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
片づけの最中、除菌ジェルが机から転がりそうになり、凌が反射で押さえた。その手の速さに莉奈が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。凌は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、凌は「次は莉奈のやりたいことを先に聞く」と言った。莉奈は少し考えてから、除菌ジェルを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】


