第86話 モバイルバッテリーから始まる相談
(蠍座君♂x牡牛座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、学校の中庭で、空気が少しひんやりしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
告白の返事をした次の週、琴葉は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。蓮悟は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがモバイルバッテリー。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
音楽を一緒に聞き始める前に、琴葉が立ち止まった。「ねえ、約束して」。蓮悟が見返すと、琴葉はモバイルバッテリーを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、琴葉は目をそらす。蓮悟は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言ってモバイルバッテリーを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。琴葉は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、蓮悟は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。琴葉は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。蓮悟は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
最後の確認をしていると、琴葉が「ありがとう」とはっきり言った。蓮悟は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で琴葉の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道、蓮悟は「次は琴葉のやりたいことを先に聞く」と言った。琴葉は少し考えてから、モバイルバッテリーを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】
(蠍座君♂x牡牛座ちゃん♀)
五月の雨上がりの朝、学校の中庭で、空気が少しひんやりしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
告白の返事をした次の週、琴葉は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。蓮悟は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがモバイルバッテリー。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
音楽を一緒に聞き始める前に、琴葉が立ち止まった。「ねえ、約束して」。蓮悟が見返すと、琴葉はモバイルバッテリーを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、琴葉は目をそらす。蓮悟は一度だけ深くうなずき、「秘密、守る」と言ってモバイルバッテリーを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。琴葉は目を細め、「ちゃんと確かめてから」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
帰り道の途中、蓮悟は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。琴葉は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。蓮悟は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
最後の確認をしていると、琴葉が「ありがとう」とはっきり言った。蓮悟は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で琴葉の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
帰り道、蓮悟は「次は琴葉のやりたいことを先に聞く」と言った。琴葉は少し考えてから、モバイルバッテリーを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の胸の奥が、ふっと軽くなった。
【終】


