第85話 栓抜きと帰り道
(蠍座君♂x牡羊座ちゃん♀)
朝練のあと、通学路で、日差しがまぶしかった。並んで歩くと、いつもの道でも景色が少し変わる。
告白の返事を伝えた次の週、朔斗は「本気でやろう」と笑い、美央は「うん」と小さく返す。
今日は頼まれごとを終える。二人の間に栓抜きがそっと置かれていた。それが始まりの合図だ。
途中で美央が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、朔斗は立ち止まる。
実は朔斗は昨日、同じ栓抜きをもう一つ用意していた。理由は、美央が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。朔斗は「秘密、守る」と言いながら、そっと手渡した。
美央は受け取り、しばらく黙ったあと、「先に動いたほうが早い」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。朔斗は「じゃ、今使おう」と前を向き、美央はその背中に小さく「うん」と重ねた。
最後の確認をしていると、美央が「ありがとう」とはっきり言った。朔斗は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で美央の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
片づけの最中、栓抜きが机から転がりそうになり、朔斗が反射で押さえた。その手の速さに美央が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。朔斗は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、朔斗は「次は美央のやりたいことを先に聞く」と言った。美央は少し考えてから、栓抜きを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。 美央は笑ってうなずき、朔斗の袖を軽く引いた。
【終】
(蠍座君♂x牡羊座ちゃん♀)
朝練のあと、通学路で、日差しがまぶしかった。並んで歩くと、いつもの道でも景色が少し変わる。
告白の返事を伝えた次の週、朔斗は「本気でやろう」と笑い、美央は「うん」と小さく返す。
今日は頼まれごとを終える。二人の間に栓抜きがそっと置かれていた。それが始まりの合図だ。
途中で美央が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、朔斗は立ち止まる。
実は朔斗は昨日、同じ栓抜きをもう一つ用意していた。理由は、美央が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。朔斗は「秘密、守る」と言いながら、そっと手渡した。
美央は受け取り、しばらく黙ったあと、「先に動いたほうが早い」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。朔斗は「じゃ、今使おう」と前を向き、美央はその背中に小さく「うん」と重ねた。
最後の確認をしていると、美央が「ありがとう」とはっきり言った。朔斗は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で美央の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
片づけの最中、栓抜きが机から転がりそうになり、朔斗が反射で押さえた。その手の速さに美央が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。朔斗は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、朔斗は「次は美央のやりたいことを先に聞く」と言った。美央は少し考えてから、栓抜きを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の距離は、前よりも少しだけ縮まった。 美央は笑ってうなずき、朔斗の袖を軽く引いた。
【終】


