星座が示す、144通りの恋

第81話 テレビが見ていた
(天秤座君♂x射手座ちゃん♀)

 帰り道の夕焼け、公園のベンチで、夕方の匂いがしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
 告白の返事をした翌週、陽向子は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。輝希は立ち止まり、鞄の中を探る。
 助けになるのがテレビ。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
 途中で陽向子が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、輝希は立ち止まる。
 実は輝希は昨日、同じテレビをもう一つ用意していた。理由は、陽向子が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。輝希は「半分こしよう」と言いながら、そっと手渡した。
 陽向子は受け取り、しばらく黙ったあと、「外の空気、吸おう」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。輝希は「じゃ、今使おう」と前を向き、陽向子はその背中に小さく「うん」と重ねた。
 帰り道の途中、輝希は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。陽向子は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。輝希は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。陽向子が「今日は助かった」と言うと、輝希は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
 帰り道、輝希は「次は陽向子のやりたいことを先に聞く」と言った。陽向子は少し考えてから、テレビを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の小さな合図が、ちゃんと届いた。
【終】