第80話 アイロンの約束
(天秤座君♂x蠍座ちゃん♀)
四月の放課後、駅の改札横で、空気が少しひんやりしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
交際が始まったばかりで、千紗は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。悠貴は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがアイロン。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
連絡を取り合うを始める前に、千紗が立ち止まった。「ねえ、約束して」。悠貴が見返すと、千紗はアイロンを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、千紗は目をそらす。悠貴は一度だけ深くうなずき、「半分こしよう」と言ってアイロンを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。千紗は目を細め、「最後まで付き合う」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
最後の確認をしていると、千紗が「ありがとう」とはっきり言った。悠貴は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で千紗の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
片づけの最中、アイロンが机から転がりそうになり、悠貴が反射で押さえた。その手の速さに千紗が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。悠貴は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、悠貴は「次は千紗のやりたいことを先に聞く」と言った。千紗は少し考えてから、アイロンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の次の約束が、自然に浮かんだ。 千紗は笑ってうなずき、悠貴の袖を軽く引いた。
【終】
(天秤座君♂x蠍座ちゃん♀)
四月の放課後、駅の改札横で、空気が少しひんやりしていた。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
交際が始まったばかりで、千紗は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。悠貴は立ち止まり、鞄の中を探る。
助けになるのがアイロン。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
連絡を取り合うを始める前に、千紗が立ち止まった。「ねえ、約束して」。悠貴が見返すと、千紗はアイロンを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、千紗は目をそらす。悠貴は一度だけ深くうなずき、「半分こしよう」と言ってアイロンを受け取った。
そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。千紗は目を細め、「最後まで付き合う」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
最後の確認をしていると、千紗が「ありがとう」とはっきり言った。悠貴は返事の代わりにうなずき、少しだけ指先で千紗の袖をつまむ。誰にも見えない小さな合図が、二人には十分だった。
片づけの最中、アイロンが机から転がりそうになり、悠貴が反射で押さえた。その手の速さに千紗が笑い、「そういうとこ、好き」とさらりと言う。悠貴は耳まで赤くしながら「今のは反則」と小声で返した。
帰り道、悠貴は「次は千紗のやりたいことを先に聞く」と言った。千紗は少し考えてから、アイロンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の次の約束が、自然に浮かんだ。 千紗は笑ってうなずき、悠貴の袖を軽く引いた。
【終】


