星座が示す、144通りの恋

第77話 リモコンを渡す瞬間
(天秤座君♂x獅子座ちゃん♀)

 日曜の買い物の帰り、駅の改札横で、日差しがまぶしかった。ポケットの中で小さな振動が続き、二人の会話が途切れた。
 二人だけの合図ができたばかりの頃、真優は画面を見て「ごめん、ここで止まりそう」と困り顔。瑛太は立ち止まり、鞄の中を探る。
 助けになるのがリモコン。機械のことが苦手でも、二人なら何とかなる気がした。
 家電の使い方を覚えるを始める前に、真優が立ち止まった。「ねえ、約束して」。瑛太が見返すと、真優はリモコンを両手で持ち、落とさないように胸の前に抱えていた。
 「忙しくても、返事はしてほしい」。言い終えると、真優は目をそらす。瑛太は一度だけ深くうなずき、「半分こしよう」と言ってリモコンを受け取った。
 そして作業の手を止めずに「遅れたら、ここで謝る」と続ける。真優は目を細め、「見てて、きれいにする」と笑った。道具の受け渡しが、二人だけのサインになった。
 終わったあと、二人は自販機の前で立ち止まった。真優が「今日は助かった」と言うと、瑛太は照れたように頬をかき、「次はもっと上手くやれる」と返した。缶の温度が手のひらに移って、言葉も少し柔らかくなる。
 帰り道の途中、瑛太は急に立ち止まり、ポケットから小さな紙を出した。そこには『今日のよかったところ』が三つ書いてある。真優は吹き出し、「宿題みたい」と笑う。瑛太は「忘れたくないだけ」と言い、紙を二人の間に挟んだ。
 帰り道、瑛太は「次は真優のやりたいことを先に聞く」と言った。真優は少し考えてから、リモコンを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人の同じ方向へ進む気持ちが、静かに重なった。
【終】